今日も雨が降っていた。
日本には「梅雨」というものがあると聞いていたけど、こんなに雨が続くものだなんて。
もっとも、雨の日自体は、私は嫌いじゃない。紅茶を飲みながら、ゆっくり読書を楽しめるから。私の隣には、あのひとがいてくれるし。
……だけど。
私は読んでいた本から顔を上げて、智也さんの横顔を見た。
智也さんはさっきから、窓の外をぼんやりと眺めている。静かに降り続く雨を。
誰かのことを、思い出している。そう考えると、ほんの少し、胸が痛んだ。
私だけを見てほしい。そんなわがままは云えない。
だけど……だけど。
あのひとの心に、私がいない。そんな瞬間があることが、とても悲しくて――。
「……どうした、詩音?」
気がつくと、智也さんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
私は慌てて笑顔を作って、首を横に振った。
「なんでもありません。紅茶のおかわりはいかがですか?」
「あ、うん、もらおうかな」
「はい」
私は立ち上がって、キッチンのほうに向かう。茶葉を交換して、ポットにお湯を注いで蒸らし……。
と、そのとき。後ろからそっと、優しく、抱きしめられた。
「……と、智也さん?」
「こうしてるとさ、安心するんだ」
私の髪に頬を埋めながら、智也さんが囁く。
私は手をあげて、彼の腕に重ねた。
「私も……同じです」
智也さんのぬくもりが、震える私の心を包み込んでくれる。
切なさは、愛しさを深めるエッセンス。
だから、私は雨の日は嫌いじゃない。
あとがき
光月雪さんのサイト「LAST CAMPUS」で企画されているコンテストに応募するために作ったものです。
「彼は彼女を使えるか」の休憩のつもりもありました(^^ゞ。
タイトルは云うまでもないですが、詩音のマキシシングルからいただいています。
ご感想などいただければ、幸いですm(__)m。