「智也、俺、大学行くの、やめるわ」
「……な、何云ってんだ、信?」
「唯笑ちゃんのところに行く」
「……!」
「彼女をひとりになんかできるかよ。……文句ないよな、智也」
「……ああ、よろしく頼む」
「――頼むだぁ!? よくそんなことが云えるよな! お前が! この俺に!」
「お前だから! ……信じゃなきゃ……云えるかよ……こんなこと……」
「……やっぱ、お前は完全無欠の大バカ野郎だよ」
「今坂さんがリタイヤするってことは、私や双海さんにも、チャンスが回ってくるってことかな」
「え……」
「わ、私は別に、三上くんのことは、なにも……」
「照れない照れない♪ ――で、いいんだよね、今坂さん?」
「……それは、智ちゃんが決めることだよ。唯笑には、関係ない」
「……ふうん。なんかガッカリだな」
「そうですね。それは同感です」
「――勝手なこと云わないでよっ! 音羽さんや詩音ちゃんに、唯笑の気持ちなんか、わかんないよ!」
「当たり前です。他人の気持ちなんて、わかるはずありません」
「……」
「だけど、だからこそ、信じていたかったんです」
「……詩音ちゃん……」
「だーーーーーっ!! イライラするなあ、もうっ!!」
「こ、小夜美さん、落ち着いて」
「だって、みなもちゃんだって、ムカつくでしょ? もう、男のくせに、いつまでもウダウダウダウダウダウダ……」
「……でも、結局それは、現実から逃げることで……」
「逃げたっていいじゃない! いつまでも同じとこで動けないでいるより、逃げ出した方が百倍マシだよ!」
欠けるはずのないピースが崩れ落ちたとき、
描いた未来図は、あっけなく砕けて消えた
行き場のない想いは、
時に大切なひとさえ傷つけてゆく
それでも彼は雨に打たれ続けることを望み、
そして、彼女はそっと目を閉じて、そんな彼を見ないことにした
Memories Off EX
『あんなに一緒だったのに』
プロローグ「あがらない雨」