そばにいるのが当たり前で、
だけど、絶対に埋められない距離があって
そのことがどうしようもなくつらなくなって、
ひとりになることを選んだ
大切なひとを恨んでしまう前に
大事な想い出を汚してしまう前に
ひとりで生きられる強さが、ほしかった
――それなのに
「おいでやすー。京都四条女子学生ハイツへようこそー。どんどんどん、ぱふぱふー」
「……ほ、ほえ?」
「あー、あかんなあ、東京の人はノリが悪うて。真冬ちんもそうやったけど」
「……そのノリにいきなりついてこられる人なんて、いないわよ、由美子」
「えー、そんなこと、あらへんよー」
「あ、あの……?」
「ご挨拶に来たんよー。うち、お隣の紫凰由美子です。よろしくー」
「よ、よろしくお願いします。しおう、さん?」
「そう、紫の凰って書くんよ」
「完全に名前負けしてるわよね」
「ひっどい、真冬ちん、いけずやわ。自分の名前、かっこええと思って」
「……だから、その呼び方はやめなさいって云ってるのに。ごめんなさいね、私は御巫真冬。由美子のさらに隣の部屋よ」
「みかなぎさん……」
「真冬でいいわよ。こっちは由美子で。えっと、あなたは、今坂……?」
「変わった名前やねー。ゆいしょう?」
「ゆ、ゆえです、今坂唯笑」
「唯笑ぽんね。ほんなら、歓迎会しよかー」
「……ほえ? ほえ?」
「上がらせてもらうわね。あ、飲み物とかみんな持ってきたから、心配しないで」
それなのに、どうして唯笑は、
いきなり宴会してるのかなあ?
……
…………
………………
ま、いっか♪
Memories Off EX
『あんなに一緒だったのに』
唯笑編・第一話「彼女たちの事情」