『だーかーらー、あんたも少しは協力しなさいって。知らない仲じゃないんだし』
「それは……そうなんだけど」
小夜美のこういう押しに、わたしは弱い。もっと言えば……ちょっと、苦手。
今でこそ違う学部だけど、昔から同じ学校に通っているという意味では、数少ない友達のひとりなんだけれど……。わたしには、こういうノリは、真似できないから。
(コンプレックス、なのかな)
ひとりで研究室なんかにこもっていると、思考まで引きこもりになるよ――って言ったのも、小夜美だったかしら。
その彼女の声が、少しだけ、トーンダウンする。
『とにかく……どうもみんな、なんかギクシャクしてるのよね。あたしにとっては、みんな同じように可愛い後輩だから……』
「うん。わかるよ」
小夜美が言いかけた言葉を制して、でも嘘ではない答えを返す。
――わたしは、AI研究の参考用に、みんなにデータサンプリングを協力してもらったことがあった。その時に顔を合わせた少年少女たちの印象は、今でも強く残ってる。あんなに楽しいメンバーと大騒ぎをしたのなんて、わたしの生活では数少ない体験だったから。
あの頃はまだみんな澄空学園に在籍してて、小夜美とも当たり前のように購買部で会っていたハズ。それが今はできなくなったから、彼女も少し寂しいんだと思う。
『そう? ホントに? まぁとにかく、ユメも何か聞いたらすぐこっちにも報告して。それとメールばっかりじゃなくて、たまにはこうして声を聞かせなさい。あたしから電話しないと、ネットに依存してばっかりなんだから、あんたは』
「その方が便利なんだもの……。それに、遠距離の人には尚更都合がいいでしょ?」
さっきからあるウィンドウが表示されたままのディスプレイに、チラリと目をやる。そこには返信を入力途中の、Eメールが放置してあった。
『そういう考え方、相変わらずねー。っと、お客さん来たみたい、じゃあね』
「はいはい……」
ピッ、とこちらの返事途中で、小夜美からの携帯が切れる。もう、相変わらずなのは、お互い様でしょう?
「ふぅ……」
言いそびれちゃったなぁ……と思いながら、わたしはデスクに戻った。不自由な右脚を、いつものように杖でかばいながら。
そして席に着いて、しばらく考えて……わたし――成沢夢眠は、稲穂クンからのEメールに、こう返事を入力した。
『やっぱりみんな……間違っているんじゃないかな?』
Memories Off EX
『あんなに一緒だったのに』
夢眠編「電子接触」