バイアルス TL125S


シンプルなエンジンは、カブと並んで分解組み立ての練習にピッタリではないでしょうか? 練習・・・かわいそうだネ。

キャブレター

まぁ〜シンプルなキャブレター。
チョークの仕組みがとってもかわいいんです。チョークオンにすると丸い窓付きの壁がウィーンと下りてきます。初期の数値を記録しながらバラしていきます。しかし、チョーク部分だけは分解できない仕組みのようです。
・・・・・できるの??  できそう・・・・・

油面の規定値は21mmですが、18〜19.5mmありました。
エアスクリューの戻し規定値は1+1/8±1/8ですが、1回転戻しでした。
ジェットニードルの段数規定値は3段ですが、上から2段目でした。

キャブのタイプはPC04Cなので、MJは♯88、SJは♯38です。
  MJ SJ
TL125 ふんどしタイプ ♯95 ♯38
PC04A ♯95 ♯35
PC04C ♯88 ♯38
PC04E ♯98 ♯35
メインジェットとスロージェットの移り変わり。
う〜む、純正にこだわらずフルパワー(?)の♯95、♯38の組み合わせを選択したくなります。
パッキンセットです。
フロートチャンバーのパッキンは、ズレて噛まないように瞬間接着剤で点止めが安心です。
   
キャブセッティング
   
   
   
エアクリーナー
TL125Sは車番1016872以降がこちらの2室タイプになっています。イーハトーブのエアクリーナーはまた違う形なんですヨ。

パーツリスト比較
車番1016871まではこちらの1室タイプです。K0、K2もこのタイプです。シンプルな方が何かと便利だと思います。もちろん軽量 化にもなりますし。
いいとこ取りして、再塗装して仕上げました。
う〜ん、キレイすぎて雑に扱えない・・・
  その後、蓋がひん曲がっていて、すき間から盛大にエアを吸っていることが判明。ポロンスポンジなどを利用してすき間を埋めてあげます。
エンジン腰上
クランクケースリアカバーを外してみたら、虫の繭(マユ)やら木片などが出てきました。錆がすごいです・・・でも、最近は錆を見てもめげることなく、『ヤッタルゾー!』と燃えてくるようになりました。知らず知らずのうちに病気にかかっていたようです(^-^)

矢印の部分に突起があって、ニュートラルスイッチの配線をチェーンから保護しているのですが、触ったとたんに折れました!!
エンジンを下ろす。
このくらいの重さなら一人でも腰を痛めることなく作業できます。見てください、掃除しがいがありそうです。ムフフ・・・
マニュアルに従ってどんどんバラしていきます。
カムシャフトが超キレイでうれし〜!
オイル管理が良かったんだね。
カーボンの堆積もこんなもの。
TL125SはK0〜K2までと違ってシリンダーヘッドが分解できます。排気量も125Sからは124ccになっています。

ガスケットをペイント剥離剤でヨレヨレにしてスクレーパーでホジホジするのも好き。
取るものは取ったから、ヘッドを分解しても大した意味はないように思えますが、分解できるところはすべて分解したくなる性分なのだから、仕方がありません。

が、プラハンでいくら引っ叩いてもウンともスンともいわず。
どこかに、こじる場所はないかなぁと探したら、ありました。
多少キズがついても平気なこじれる場所。矢印の隙間ネ。
何やら怪しげな薄暗い場所でコソコソとバルブの取り外し中。とっても幸せな時間。

下:パーツクリーナーで洗浄後
ちょっとまじめにTL125Sのチェック要項です。

シリンダー内径
標準値 修正限度
56.50 〜 56.51mm 56.60mm以上
ピストン外径 (スカート部を測定する)
標準値 修正限度
56.46 〜 56.48mm 56.35mm以下
ピストンとピストンリングの隙間
  標準値 修正限度
トップ・セカンドリング 0.025 〜 0.030mm 0.7mm
オイルリング 0.025 〜 0.030mm 0.7mm
ピストンリング合口隙間(シリンダーにピストンリングを入れて合口をシックネスゲージで測定)
  標準値 修正限度
トップ・セカンドリング 0.15 〜 0.35mm 0.5mm以上
オイルリング 0.15 〜 0.40mm 0.5mm以上

測定値は
シリンダー内径 56.50mm
ピストン外径 56.48mm
ピストンリングは新品に交換します。

バルブ摺り合わせ
バルブ外径
標準値 修正限度
IN 5.450〜5.465mm
EX 5.430〜5.445mm
5.42mm以下
5.400mm以下
バルブスプリング自由長
標準値 修正限度
アウタ 40.7mm
インナ 33.5mm
39.8mm以下
32.0mm以下

測定値は
バルブ外径 IN 5.46mm EX 5.44mm
バルブスプリング自由長 アウタ 40.0mm インナ 33.5mm
ちなみに、バルブとバルブガイドのガタはIN 0.08mm以上、
EX 0.1mm以上あるときは交換です。
楽しいバルブ摺り合わせ。トントントントン、リズムを耳にしていると何だか眠くなってくるヨ・・・・・
いつか巨大吸盤のタコ棒(左上写真)を使う日が来るのでしょうか? なかなか小排気量 から脱出できないもんなぁ。一生使わなかったら悲しい。

吸気側はキレイでほとんど無傷。排気側のみの作業となる。
仕上げに灯油を満たして、漏れを調べます。
   
エンジン腰下
さー、腰下もどんどんバラシます。

Rクランクカバーを外したら、マニュアルに従ってオイルフィルター、オイルポンプ、クラッチを分解します。
オイルフィルターローターキャップを外すと、ゴミを溜めるローターが現れます。壁面 に固くなったオイルが泥のようにへばりついています。でも全然キレイ!

16ミリロックナットを特殊工具のロックナットレンチで取ります。このナットがとんでもなく手強くて、ここまでで一番の難関でした!
ここから更にギアシフトプレート、ギアシフトカム、ギアシフトスピンドル(シャフト)を分解します。
 
 

Lクランクカバーを取って、コイル、フライホイールを抜きます。フライホイールはリアアクスルシャフト(RD125のアクスルシャフトも径が同じだったので、それを使用)をねじ込んで、打ち下ろすように叩いて外します。

カムチェーンテンショナーもここで取れます。

コイルからの配線の被覆が切れていたので修理します。ついでに耐熱ガラスチューブも新調しました。お金をかけたくないのに、次から次へと買うものが出てくるヨ。
 
R側を下にしてクランクケースを割ります。ノックピンが錆びていて簡単ではなかったけど、時間をかけて一刀両断!!
パカッ。
美しい心臓部。
複雑だけど、パーツ点数は多くないので臆することはありません。小さな宇宙にしばしウットリしましょう。

しつこいようですが、ミッションに問題があるわけではありません。ただ見たかっただけで分解しています。

キックギアの分解。

TL125Sの後期は部品点数の多いこちらのタイプになります。う〜ん、複雑な構造にワクワクです。

カウンターシャフトのギア配置

写真には16.5mmワッシャーが写ってないので注意して下さい!

トップギアは20mmセットリングを外せば分解できます。
メインシャフトのギア配置

トップ、サードギアは20mmセットリングを外せばそれぞれ分解できます。
ギア、ドッグはすべてきれいで問題ありませんでした。シール交換とケースの洗浄がメインの仕事になります。
   
組み立て

組み立て時、可動部にはオイルで溶いたモリブデングリスを塗っていきます。

キックスタータースピンドルを組み立てて、Rクランクケースにセットしようとしたら、うまく収まらない・・・
分解してもう一度よく見たら、こんな所に刻印があるではないですか。刻印同士を合わせて、組み立てたらちゃんと収まりました。

この写真のように、時計回りにスプリングにテンションをかけて、ギアのピニオンとラチェットが離れるようにセットします。
|キックスタータースピンドル
}メインシャフト、カウンターシャフトを一緒に
~ギアシフトドラム
シフトフォーク
の順に組んでいきます。

Rギアシフトフォーク、センターギアシフトフォークはシャフトからバラして組み、ボールがセットされているLギアシフトフォークはシャフトと共に組みます。その際、ギアシフトドラムは写 真の位置が入れやすいようです。

この時点で、『変速されるか、ギアが回るか』など、組み間違いがないかチェックします。
クランクシャフトをセットしたら、ノックピン2個、ガスケットをセットしてLクランクケースを合わせます。ガスケットには念のため液体ガスケットを薄く塗っておきました。

Lクランクケースを垂直に下ろしていっても、全く入る気配がない。隙間からのぞいてみると、キックスタータースピンドルが入ってなかった。ここはテンションがかかっているので、赤い矢印の方向に押しながら入れてあげましょう。

※カウンターシャフトのスプロケットをつける部分が鋭利なので、サランラップなどで保護しておいた方が、オイルシールを傷つけることがなく安心かも。

※Lクランクケース側のカウンターシャフトのオイルシール(20×34×7)はクランクケースを合わせた後からでもセットできます。
カムチェーンをかけてから、カムチェーンテンショナーを付けます。写 真のように先にテンショナーをつけるとカムチェーンがつきませんヨ〜!
オートテンショナーなので、16ミリスペシャルボルトの上についている6×10ボルトは単なる蓋で調整には関係ありません。

L側はフライホイールを取り付けて終了です。
ギアシフトカム(星型)、ギアシフトドラムストッパーをボルトで固定。ギアシフトスピンドルを差し込んでギアシフトプレートを付けます。

クラッチアウターを付けてから、フライホイールを締め付けます。クラッチアウターのギアとプライマリードリブンギアの間に布などを挟んで固定できるので作業しやすいです。
クラッチプレートとクラッチフリクションディスクは、もちろん、スムースに移動してもらうために角を落として滑らかにしています。
クラッチフリクションディスク(5枚)のみ新品に交換。

RD125では、クラッチの重さとニュートラル消滅で苦労しましたから!!
オイルポンプです。

オイルポンププレートの取り付け位置に注意。

薄〜いガスケットは交換。
オイルフィルターです。

ロッキングワッシャーはoutsideの表記がある側を外側にして取り付けます。
オイルフィルターだけは取り付けの途中ですが、クラッチリフターロッドをつければ、R側はこれで終了です。
 
アウターバルブスプリングは写真のように間隔の詰まった方を下にして組みます。インナーの向きはないと思われます。
バルブ、ロッカーアームを組んで、耐熱液体ガスケットを塗ってシリンダーヘッドを合わせます。
ヘッドを合わせてからでもバルブ、ロッカーアームは組めますので、どちらを先にしても大丈夫です。
シリンダーガスケット(下)と、シリンダーヘッドガスケット(上)。右列は社外ガスケットセットより、左列は新たに注文した品です。
シリンダー、シリンダーヘッドを組みます。

注意するところは、カムシャフトを入れる前に6ミリHSボルト(長いやつ)を刺しておくということ。

カムシャフトはカム部を上に向けて入れて、半回転させて下向きにしてから押し込みます。カムがロッカーアームを押し上げないようにネ。

カムスプロケットは、フライホイールのTマークを矢印のトンガリに合わせて(上死点)、カムスプロケットのOマークが真上に来るように合わせて取り付けます。 写真のガイド線のようにクランクシャフトからカムシャフトへ引いた軸上ということ。

この時点でポイントを仮組みして点火時期が調整範囲内におさまるかどうかを確認しておくことをお勧めします。
コンタクトブレーカーベース、ガバナー、ポイント、カバーと取り付けたら、とりあえず完成かな。
ついでなので、タペットを調整しておきます。

ブラストした美しさにはかないませんが、汚れが角々に残っていて年期を感じさせてくれます。これもまた美しさなんです!

それにしても、かわいいキノコ形だなぁ〜。頬をスリスリしたくなります。
クランクケースカバーには耐熱塗料を吹きました。
何で読んだのか忘れましたが、『耐熱塗料は塗る物を暖めてからスプレーを吹くと良い感じ』とあったので、ストーブの上でガンガンに熱くして吹きました。塗り終ってしばらくしたら、煙が上がるまで熱して焼きつけます。

Rクランクケースにクラッチレバー、リフターカムなどを組み込んで、クラッチ側にはクラッチリフターピンとリフターロッドを入れるのを忘れずに。(クラッチが正常に切れるか試しに引いてみましたが、クラッチレバーのみでの操作はヒジョーに重いです!)
スプロケカバーの裏が大きく欠損していたので、アルミ板を使って補修しました。

走行中に切れたチェーンが当たって破壊したのか、石を巻き込んで破壊したのか? 
とにかく泥と油汚れは、これ以上前には行かせん!