ありえないオンライン9


手が!小説を書く手が止まらないィィィィ!!
これもあれもどれもそれも北朝鮮のせいなニダ!
え?関係ないって?あ…そう、うん…。


俺達は転がり込むようにトロッコへ乗り込んだ。
さすがに5人だと相当狭いが、
走行不可能な程ではない。
最後に乗り込んだ紅炎が思いきり地面を蹴った。

ゴロゴロゴロ…ガガガガ…ゴーーーー!!

トロッコが勢い良く走り出す。
丸でロデオに乗っているような激しい揺れを感じた。
そもそもトロッコと言うのは掘り出した土や鉱石を
外に素早く運び出す為の滑車だ。
人間が乗るのはあまり考慮されてない。
ラグナロックオンライン開発チームも、
その辺の知識は持ち合わせているようだった。

「ゆゆゆ、揺れるぅぅぅぅぉぉあああ!!!」

「早過ぎないかこれはぁぁああああああああ!!!!」

「楽しい〜!」

…最後のはスフィアだ。
だが、決死の行動だけあって、
briskの姿はみるみる内に小さくなって行った。
しかし問題はここからである。

「…とりあえず電波野郎から逃げることは出来たが…、
本当にこのまま外へ出られるんだろうね?」

「ああ、看板に外行きって書いてあったからな…」

ガタン!

時々レール上に散乱している瓦礫のせいで、
トロッコごと横転しそうになる。
その恐怖もあってか、焔が堰を切ったように叫んだ。

「こんな二階が一階みたいで三階に意味不明なフロアが
出てきてるダンジョンのわっ!!」

ガタン!!

「でで、出てきてるダンジョンの看板なんて、ああ当てになるんか!?」

そう言われると俺も自信が無くなって来た。
だが、ここで弱音は吐けない。

「大丈夫!根拠は全く皆無だがきっと大丈夫!」

みるみる内に、今まで歩いて来た風景が通過して行く。
途中、何匹かモンスターもいたが、
こっちに手を出す時間も無いようだ。
身体を揺さぶられながらトロッコの中を覗いてみると、
作業用のツルハシとブレーキング用の鉄棒が置いてあった。

ガガガガ…!

「あうあうあうあうあう」

それにしてもこれは揺れる。
出来の悪いジェットコースターよりタチが悪い。
乗り物に強い俺でも酔いそうだった。

暗い廊下をしばらく疾走すると、突然目の前が開けた。

「うおおお!まずいんじゃないですか!?」

トロッコの行く先は、なんとスッパリとレールが途切れているのだ。
突然視界に入ったので、確認する暇も無かった。
俺は急いでブレーキ用の鉄棒を取り出す、と、
もう既にレールの途切れた部分が後ろを通り過ぎていった。

「わああああああ!!」

ふわっとエレベーターが停止するような感触に見舞われたかと思うと、
次の瞬間俺達はトロッコごと空中を飛んでいた。
はるか下には燃え盛るような溶鉱炉が見える。

「お、落、落ち、落ち…!!」

紅炎が表現し切れないほど混乱した。

ガッタン!!ゴゴゴゴ…!

もう駄目かと思いきや、
トロッコは奇跡的に別のレールに乗った。
溶鉱炉を跳び越したのだ。
慣性の法則により、さっきと変わらぬスピードでトロッコは走り出す。
誰かがヒュウっと口笛を吹いた。
きっと姉妹のどっちかだ。

俺はレールに乗った衝撃で、
あろうことかブレーキ棒を取り落としてしまった。

「あ、しまった!ブレーキできねぇ!」

俺のその一言でさらにトロッコ内は混乱状態となった。

「おおおおい!何してるんだよ馬鹿!これじゃ先どうなるんだよ!」

「…困ったなぁ、アハ」

勤めて明るく笑い返したが、逆効果だったらしく、
焔と紅炎は泣きそうな顔で俺を見ていた。

「ん?行き止まりですよ!」

なしゆがスフィアを抱えながら叫んだ。
前方の方へ誰もが目を向けた刹那、
トロッコに強烈な衝撃が走る。

「どわ!」

だが、突き当たる部分にはタイヤが二個添えつけてあった。
それがクッションとなり、思ったほどのダメージは無かったようだ。

ギギギ、ガタガタガタ…。

間髪入れず、下のレールがせり上がって来た。
どうやら滑車の力でトロッコごと上に持ち上げる仕組みのようだ。
俺達の乗るトロッコはそれに準じて上へと登る。

「なるほど、エレベーターか。
こうやってトロッコを上に持ち上げて行くんだな」

だが、エレベーターの速度も尋常じゃないほど速い。
天井に衝突するんじゃないかと思うくらい上まで登ると、
再びトロッコはゆっくり動き出した。
どうやらエレベーターの後は下勾配になっているようで、
みるみるうちにトロッコは加速する。

そこで、声が聞こえた。
なしゆでもない、スフィアでもない、
かと言って紅炎や焔でも無い、
聞き覚えのある声だ。

その主はあのGM、briskだった。
なんと奴は、別のトロッコに乗って
こちらを追いかけてくるではないか。
二階付近で待ち伏せされていたのだ。

「なしゆぅぅぅ!!『鍵』を渡せ!
まだだ、まだ俺は諦めんぞ!」

「し、しつこい奴だ!」

「どうやってこんなに早く二階へ来たんだ!?」

「追いつかれるぞ!スピードを上げろ!」

俺達は極力トロッコの手前へ移動し、
スピードを上げるように専念した。

リアルで見た「スピード」という映画がふっと思い出された。

ゴゴォォォーーーーーーーーー!!

段々シャレにならないスピードになって行く。
俺達は手に汗どころでも無く、全身汗びっしょりだった。

後ろを振り向くと、briskが物凄い形相で迫ってくる。
一人しか乗っていない分、あちらの方がスピードが速い。

「お、追いつかれるぞ!」

言う暇も無く、briskのトロッコがこちらに追突した。

ドガッ!!

「うおっ!!」

衝撃で落ちそうになる焔を必死で捕まえた。
briskは再度追突しようと、近づいてくる。
何が何でも俺達を止めるつもりだ。

「待て!待ちやがれ!」

「きゃあぁぁ!」

なしゆの服のすそをbriskに掴まれた!
なんとか落ちそうになるなしゆを、
男三人必死で押さえる。

「なしゆ…『鍵』を渡してもらうぞ!
なんとしてでも!この悪夢から脱出する為にな!」

グイグイと引っ張るbrisk。
なしゆは二つのトロッコ間でブリッジ状態になった。
このままでは落下するのは時間の問題だ!

そう思った矢先。

「妹を放しなさい!!」

さっきまでぐったりとしていたスフィアが、
briskに向かってツルハシを振り下ろした。
トロッコの中に置いてあった奴だ。
ツルハシの先はbriskの左目を掠った。

「うがああ!目、目が!!」

反射的に手を離すbrisk。
俺達は力一杯なしゆをトロッコへ引き戻した。
さしものなしゆもぜいぜいと肩で息をしている。

「ぎゃあああ!!」

ガッシャアアア!!ズギャア!!ガゴ!!

briskはそのままバランスを崩し、
トロッコの縁へ寄りかかったかと思うと、
その急速な体重移動のせいかトロッコごと横転した。

凄まじい勢いでトロッコは空中分解し、
briskは何十回転もしながらレールの上を転げ落ちた。
そのままゴロゴロと転がる姿を最後に、
どんどん視界から遠ざけられ、小さくなっていった。

俺達のトロッコはその間にもスピードを増す。

「そういやここ二階か!
二階への階段は塞がっていたけど、
このトロッコはどっから一階へ行くんだ!?」

先ほどのようにエレベーターがあるような雰囲気も無い。
真っ暗な暗闇を突き進むトロッコ。
下手なボスと戦うよりずっと怖い。

固唾を呑んで行く先を凝視していると、
はるか先に一点の光が見えた。

「出口!?」

「まだ地下二階だぞここは!」

ぐんぐん大きくなる光。
俺達はそのまま光の中心へと突っ込んだ。

ガガアアッ!!

再びレールの途切れた感覚。
ぱあっと視界が開けたかと思うと、
突如岩肌をくり貫いたような出口へ出た。
トロッコは大きな岩に衝突して急停車するが、
俺達は慣性の法則によって、そのまま前方へと投げ出された。

「あーーーーー………」

5人揃って間抜けな声を出す。

バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!バシャン!

体中が冷たくなった。
目の前には真っ青な世界。
この感覚には見覚えがある。
そう、最後にこの世界へログインしてきた時と同じ…。

「ぷはっ!」

一生懸命足をバタ付かせて浮上して見ると、そこは一面小さな池だった。
あとの4人もぽかんとした表情で浮かんできた。

「…助かったのか」

「……助かったって言えるこれ?」

俺達はそのまま5分程池に浮かんで呆けていた。

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