Inexorable
因果

因果と言う言葉がある。
つまり、ある事象が他の事象に働きかけていると感じる概念。
例を挙げると、動体Aが静止体Bに衝突してBが動き出す時、
人間は、AがBを動かしたという因果を感じ取る。

これは世の様々な関係にも成り立っている。
例えば、月と太陽。
月は太陽の光を反射して明かっている。
む、これは知らない人もいるかもしれない。
少し例が悪かった。

他に言うとすれば…、
火と水なんかはどうだろう。
燃え盛る炎も水をかければ忽ち消える。
だが、火が勝手に消えるのではない、水が消したのだ。
もっと言うなれば、水をかけたものが消したのだ。
いや、水を出した蛇口が消したのかもしれないな。
ダムが消したかもしれない。川が消したのか?
地球が消したのかもしれんな。

火は消える為に生まれて来たのか。
それとも消える事は望まれていないのに、
偶然消えてしまったのか。

熱学第二法則と言うものがある。
不可逆的な量的表現の測度…、
つまり、実に簡単に取り上げて言えば、
ストーブの電源を入れると、部屋が暖かくなるが、
電源を切ってしまえば温度は下り、やがて寒くなって行く。
再び独りでに部屋が暖まる事は無い。

この世界と言う部屋にストーブはあるのだろうか。
世界とストーブの因果はあるのだろうか。

私はそんな因果の関係には呑まれたくない。
私は死にたくない。
どんなに生前偉大な事をしたとしても、
死んでしまえば如何なる愚者とも同じ。
腐って、土塊に還る。
冷たい土の下で、二度と日の目を見ること無く。

墓に刻まれた文字などどうでも良い。
生前の私を覚えている人間がいるかなど、尚、どうでも良い。
名誉や金をいくら残したとて、あの世に行くには何の役にも立たない。
そんな物は死体と共に埋めてしまえば良い。
藤袴の一本でも生やせばそれで良い。

脱・因・果。

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