肉体の全てが我が力

肉体…それは力である。
肉体を持たぬ物は現世に於いて何も出来ぬ。
由って私は肉体を手に入れ、人の世に甘んじる事にした。
では、何故人の世に甘んじたのか?
それは人間を徹底的に理解する為である。
人間を理解するには、外側からでは難しい。
内面から衝突せねば!

だが、本来生き地獄と評されるこの現世で
一つだけ得た答えがある。

人間はそれほど虚しい生き物では無い。
むしろ素晴らしい。
嘗て人間に絶望し、人の世に嫌気が差し、
二度暗黒に身を委ねようと考えた私だが、
歳を重ねるごとに次第に箱の中身が見えて来た。
そう、よく言うパンドラの箱だ。

これが塵芥から創られた人間なのか?

否、そんなはずはない。
塵芥から肉体が得られるはずがない。
ならば私はとうにそうしている。

全ては血が駆け巡り、脳が活性させる理性、
結句、素晴らしい。

それほどに私を脅かす物は「老化」である。
精神は凌駕出来るが、肉体の老化は防げぬ。
恒久的な肉体は存在し得ぬのだろうか。
だが、それも些細な問題だ。

我が一挙手一投足が兎角素晴らしい。
これが肉体の力か。
何でも出来る…何でも可能だ。
絶望などは人の幻想。
我ら悪魔でも思いのよらぬ脅迫概念だ。
さぁ、明日は何をしようか…。
何を為そうか…。
愉快だ…。

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