「クレヨン王国シリーズ」
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第壱回
「クレヨン王国のパトロール隊長」

初版発行日:昭和59年3月10日
244ページ(本文239ページ)


主人公:
ノブオ(小学5年生・男の子)

時期:
5年生から6年生にあがるときの春休み

クレヨン王国への入国のきっかけ:
ノブオの持ってきた妹の12色のクレヨンを、
クラスメイトの野島君が、夜の森で、ひっくり返してしまう

登場人物

*クレヨン王国にはいるまで*
きよ子(ノブオの妹):交通事故で、目が見えなくなった妹。
右田先生(担任):ノブオは先生の事が大嫌いで、先生も何かとノブオを目の敵にしている。
野島君(クラスメイト):ノブオの持ってきたクレヨンを、あやまって蹴ってしまう。
まり子(ノブオの幼なじみ):同じクラスでもある。

*クレヨン王国へ入国*
カメレオン総理:クレヨン王国の総理大臣
ゴールデン国王:クレヨン王国の王様
クレヨン大臣:12色の帽子をかぶっているクレヨンの形をした大臣達
フクロウ:776代目のクレヨン王国のパトロール隊長、ノブオは次の代のパトロール隊長となる
カラス達:パトロール隊長に仕える隊員達
ワレモコウ:秋の野に咲く花びらのない花。
スージー:水の精フローラーの娘
フローラー:水の精。強大な力を持ち、その姿を見た物は生きていられない。
ヒュードン:火の精カヤーナの息子
カヤーナ:火の精。水の精と並ぶ強大な力を持ち、水の精と戦争をしている
木踊り山:木達が自分の根を切りつめて踊り続ける山。この山のことがきっかけで、水と火は戦争に。
ネダマンネン:病を集めている神。


*アイテム*
心の玉:これを握らせたすべての物はおとなしくなる。そして、その触れた人の心がみんなわかる。
赤い玉:火の精カヤーナを呼ぶ玉
青い玉:水の精フローラーを呼ぶ玉
どっちも空へ投げて、「おいで」と叫べば、その精がやってくる。
しかし精を呼んでしまえば、その精の姿を見ることになるので、それはイコール、命を落とすこととなる。

*コメント*(全く個人的なコメントです)

 「クレヨン王国のパトロール隊長」という職業をノブオは自分から選ぶ。パトロール隊長というのは、実際大変な仕事で、小学5年生のノブオには、かなり重い任務だ。
 ノブオは、まだ5年生で、甘えたい盛りだが、甘えられる、母はいない。今いる母は継母だ。継母はきびしいことはないが、ノブオの心の中でうまくやっていこうとする反面、それが裏目に出ることが多く、母や父に誤解されている。
 ノブオの心は、憎しみと悲しみの筋がいくつもはびこり、いつ崩壊してもおかしくない状態なのに、ノブオは、そのどこから来るかしれない強さで、苦しみを耐えていた。
 でもそれをわかってくれる人はいない。親も、担任の先生も、友達もみんなわかってはくれない。ノブオは自分だけを信じ、自分のせいで、盲目になった、妹を守っていかなければという思いだけなのだ。
 しかし、クレヨン王国で、スージーという水の精に出逢い、少しずつ変わる。奔放で、何不自由なく水の精の娘として育ったスージー。ノブオは、そのスージーのために命を投げ出す覚悟で、パトロール隊長として任務を果たそうとする。
 人は、辛いことで心がいっぱいになったり、自分のことで精一杯だと、「誰もわかってくれない。」「誰が私の痛みをわかるものか。」と、思うだろう。でも、それは自分をわかろうとしたくないから、他人を拒絶しているのではないだろうか。誰もわかってくれないのではなくて、誰にもわかって欲しくないと、自分から拒絶しているのではなかろうか。自分こそが他人をわかってないのではなかろうか。
 他人の痛みを自分の物として、受け止める。一見何不自由ないようなスージーでも、よく知れば、ノブオとは違う種類の悲しみを背負っているのだ。ノブオが、今まで目を向けなかった、人の痛み。「自分だけが」と思っていた事が、自分だけではない、スージーも、ヒュードンも、いろんな側面から、どの人も同じように、痛みは違えども、心に苦しみを持っているのだ、そして、それが生きるということなのだ、ということを教えてくれる話だと、私は思います。



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