◆「狂花前想2 〜AKIRA Side〜」◆
(アキヒカ)
◆予告編◆


最終更新日:2003年12月15日 午後 2:46:11
●表紙イラストアップと、本の詳細を書き足しました。●


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「ボクから去る事など、許さない・・。進藤・・。
ボクらが特別な運命で結ばれ ている事を証明してみせる!。」

【内容】
ページ数、予定より増えました。
オフセット・A5・36ページ(表紙込み)・300円
(小説です)
我がサークルの18禁シリーズ「狂花遊戯」の前のお話。
9月にでた「狂花前想HIKARU Side」の続きになります。18禁ではありません。
しかも、ちょっとラブコメ気味。アキラさんへたれ気味(笑)。へたれ攻め決定!な内容。

●主な内容
アキラとヒカルは17歳。お互いライバルと認め合い、普段碁会所でうちあう普通の友達。
しかし、マンションで二人で住むようになって、友達以上の感情を持ち、とまどうヒカルはマンションに帰らなくなる。
ヒカルのことを「生涯のライバル」と思っているアキラはどうしてヒカルが出ていったのかわからずに悩むが・・・。

【試し読み(一部抜粋)】
 自分がヒカルに執着していると言うことを自覚したのは、ヒカルが囲碁をやめてしまいそうになった時だ。院生の仲間達が若獅子戦の会場でヒカルのことを話しているのをこっそりと聞いて、自分の中に激しく揺さぶられる物があることを知った。ヒカルが囲碁をやめるということは、アキラの人生にまた再び、面白みのない暗闇だけが道を支配することになる。その恐怖はアキラの中で怒りに変わった。
「どうして若獅子戦にこなかった。打たないだって!ふざけるな!」
 アキラはヒカルの中学に乗り込んで、塞ぎ込むヒカルを問いただし、怒鳴った。あの時のヒカルの揺れる瞳が忘れられない。ヒカルがその大きな澄んだ瞳に、自分を映す事がこんなに自分を歓喜させるのかと。そして、
「もう打たない。」
と言った時の、揺れながらそらされる彼の視線。自分からそらされる視線があれほどせつない相手が他にいるだろうか。そらされた瞳が自分でない誰かを見るのかと思うとその身をつぶされる思いがした。
 なんとしてでもヒカルを取り戻したかった。囲碁という世界を共に歩きたいと強く強く願っている事を自覚した瞬間だった。
 あの時もどうやったらヒカルを取り戻せるのか、うだうだと考えている間に、ヒカルは自分ではずれた滑車を線路に戻した。その足で、アキラの所に真っ先に来て、
「ずっと一緒の道を歩く。」
と宣言したのだと、あとでヒカルに聞いてこの上なく嬉しかった。
 その時はまだ中学生で幼く、ヒカルが囲碁に戻ってきてくれた事がただただ嬉しくて、深く考えはしなかったが、あれから4年の月日が流れ、考え方も変わってきた。いや、変わったというよりは成長したのか。ヒカルの事をそうっと見守っていた中学時代とは違う。もう今は好きな時に好きなように打ち合え、激しく検討しあえる理想のライバルの位置に自分はいる。『切磋琢磨し合う仲』、『最高の共に歩むべき棋士仲間』である。
 しかし、大人になった分、アキラはそれでは満足できなくなっていた。どうしてだろうと考えたあげく、ノドに刺さった小さな魚の骨みたいにひっかかっている事があるとわかる。それはあのヒカルが一旦囲碁から離れ、戻ってきたその時の事だ。どうやって立ち直ったのか、アキラはヒカルに詳しくきいたわけではない。だが、アキラがきっかけにならなかったのは事実だ。自分が葉瀬中に押し掛けた日から随分経ってから、ヒカルは急に自分を取り戻した。誰かと、何かが、あったはずだ。その直接のきっかけを自分以外の誰かが与えた事を残念に思った。・・そんな忘れていた小さな後悔をいまだにどこかで引きずっている事を自覚したのだ。
 自分の人生に「進藤ヒカル」が強烈な足跡を残しているように、アキラもヒカルの中に「塔矢アキラ」によって人生の節目を与え、一生ヒカルの心に染みついていきたかった。ヒカルにとって、自分は『唯一無二の存在』となり、彼に心を開いて欲しかった。それはいまだに話してくれない「彼の謎」をあきらかにしてほしいという願いも含まれる。ヒカルがまだ・・多分・・誰にも話していない、彼の心の傷。何よりもその傷を大事にしている事はアキラにはわかっていた。
「佐為・・。」
 時々リビングでうたた寝するヒカルがつぶやく寝言。その名を呼ぶ時のヒカルの顔はアキラに見せた事のない顔だった。ネットのsaiと同一人物であるかどうかまではわからない。しかし、ヒカルの絶対的に大切な思い出として、心の中に大きく残る存在であることはわかる。
 アキラはその名の人物について、話して欲しいと願いながらも、ひそかに嫉妬していた。自分はヒカルの心の中にそれほどまでに強く残れるのだろうか。そう思うと不安だった。
「まだ、全然進藤の特別なものにはなれていない・・。」
 ヒカルとの同居はアキラに焦燥感と無力感を植え付けるものだった。その暗い気持ちを隠すために、アキラは必死にヒカルに優しくした。自分が考えうる、最高の優しさでヒカルに接した。ただただ、ヒカルの笑顔が見たい・・喜んで欲しい・・そして、いつか・・自分にしか見せない顔で接して欲しいと。初めての大切な大切な宝物を真綿にくるんで抱きしめるように。
 しかし大事にしすぎたのかもしれない。宝物はふとしたきっかけでたやすく傷つき、自分から離れていった。離れていって初めて、自分は失敗したのだと気付いた。遅すぎた。
『最初はすごくうまくいっていたのに、いつから歯車が崩れはじめたんだろう・・。』


つづきは本編で
表紙のイラスト(イラスト:ちゃがま)

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