<恋のシャレード4 試し読み>



殺風景ですみません(汗)。せっぱ詰まってます。
とりあえず、少しですが、試し読みをどうぞ。

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「ふむ・・なるほど・・。」
 塔矢家の書庫で、アキラは読書にふけっていた。
母の努力でほこり一つない塔矢家だが、書庫には多少独特の古い書物の匂いがこもっていた。
「昔読んで本でも、また今読むと勉強になる。小さい時はこの話が人生においてどういう意味を持つのか全くわからなかったが、今初めてわかる・・。この物語の真実が・・。これは人生の節目の超え方を暗示していたんだ・・。」
 アキラは目から鱗な気分になって、悦に入った表情で本を閉じ、大事に抱えて書庫をあとにした。
「待ってろ、進藤。ボクはキミを必ず手に入れる!」


「ふえっくしょい。」
「何です?ヒカル。風邪ですか?」
 佐為は心配そうにヒカルを覗き込んだ。
「そんな事ねーと思うんだけど・・。」
「夏風邪は長引きますよ。大事なプロ試験中なのですから、寝る時も暑くてもきちんと布団を着て寝ないと・・。ヒカルいっつも布団けっとばしちゃうんですもん。」
「風邪じゃねーって。・・噂されてんのかな?」
「噂ー?」
 ヒカルは、そういいながらもさして気にしないように、にかっと笑った。心配するなというように。
 囲碁研修センターの門をくぐると、すれ違う人の様子がなんだかおかしい。
「?。なんかみんなヒカルのこと見てませんか?」
 佐為が気づいて、ヒカルにこそっと話しかけると、ヒカルは周りを見回した。ヒカルをいろじろじろ見ていた人達はこそこそと視線をそらせて、建物へ急いでいた。
「そう?」
 ヒカルは、さして不思議にも思わずに、
「気のせいだろ?」
と足取りも軽く玄関へ急いだ。


 控え室には、もう和谷や奈瀬達が来ていた。
「そういえばさ、進藤が院生になったばかりの頃、進藤が塔矢アキラのライバルじゃないかって噂があったよね。」
 奈瀬が、急に思い出して、そう言った。
「ああ、あったけど・・。でも進藤の実力がそれに伴ってなかったからすぐにその噂はなくなったよな。」
「私、あの時ひっかかってたのよ。だって、しばらく2組でもたついてたような進藤を塔矢アキラがライバル視するはずもないしさ、大体あの二人の接点とか考えられないじゃない?学校だって違うし、第一進藤は囲碁のことに疎いのよ。いまだにタイトル戦の名前も全部知らないんじゃない?それなのに、囲碁一筋な塔矢アキラがよ、進藤と知り合うようなきっかけってありえないと思うのよ。」
「何が言いたいんだ?奈瀬は。」
「だからぁ・・あれってさ、本当は、進藤が塔矢アキラのライバルじゃなくて・・塔矢アキラの想い人って言うことなのかも・・。「気にしてる」って言葉の意味をさ、ライバルとして気にしてるって周りは思っていたけど、本当は・・違う「気にしてる」なのかも!ってこと!」
 奈瀬は目をキラキラと輝かせた。どうやら少しばかり男子カップル好きな腐女子の血が入っているらしい。和谷や飯島はうんざりした表情を浮かべた。
「それならつじつまが合うじゃない?この前の妙なピンクのチラシもさ、案外デマじゃないって事よ。」
 奈瀬はなぜか勝ち誇ったような笑みを浮かべ、鼻息が荒くなっている。和谷はため息をついて、
「デマじゃないって・・じゃあ、誰がそんな噂流すんだよ。っていうか、そんな事どうでもいいじゃん。オレ、興味ねー。それに進藤にそういうこと言うなよ。大事なプロ試験中なんだから。」
と、奈瀬をたしなめた。
「おはよー。」
 ちょうどそこにヒカルが入ってきて、一同は一瞬さっと静かになった。
「なに?どうしたの?」
 きょんとしているヒカルに、和谷はいつも通りのフレンドリーな笑顔を作って、その場のシーンとなった気まずい雰囲気を壊す。
「ううん。なんでもない。それより、進藤、今日は昼飯どうするんだ?」
「ん?持ってきた。」
「そっか。じゃ、オレは注文してこよっかなー。」
 何気ない普段の会話で、すっかりいつもの会話の明るさを取り戻したかのように見えたが、佐為はなにやら違和感を感じていた。
『なにか・・皆の間に不自然な視線を感じます・・。なんでしょう・・。私の気のせいならばいいのですが・・。その興味に満ちた視線がどうもヒカルに注がれているような・・・全勝のヒカルに羨望や敵対心での視線ではなく・・好奇に満ちたものを感じるような・・。』

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