浴衣でGO!
【2話 夏祭りへ】

このお話は2002年33号ジャンプのヒカ碁カラー表紙を元に書いた、
お遊びシナリオ風ショートストーリーです(笑)

 囲碁の勝負に負けてしまったヒカルは、アキラと「手を繋ぐ」のを免除してもらうために、別の条件をのむことにした。それは、ヒカルが浴衣を着ることだった。
 しぶしぶながら、アキラがなぜか用意して隠し持っていた浴衣を着て、夏祭りへ。

ヒカル「オレ浴衣なんかはじめて・・・。なんかすーすーするし・・。」
奈瀬「あら、案外似合ってるわよ。」
和谷「それにしょうがねぇじゃん。お前が塔矢に負けたんだから・・。手繋ぐよりましだろ。」
奈瀬「手ぐらい繋いであげればいいのに。変なの。」
ヒカル「奈瀬・・人ごとだと思って・・。」
奈瀬「あら、だって、塔矢君は進藤がきょろきょろしてはぐれるだろうからって、親切で手を繋ごうって言ってくれるんじゃない。なかなかないわよ。この歳で手を繋いでくれるなんて・・。」
ヒカル「奈瀬、違うって・・。」
アキラ「ははは。いいんですよ。進藤がはぐれそうになったら手を繋ぎますから。」
ヒカル「なにぃ。お前の言うとおり、色違いのお揃いの浴衣着たのに、まだ手を繋ぐ気かよ。約束が違うぞ。」
アキラ「じゃあ、キミがはぐれなければ、手は握らない・・。でもはぐれた時は・・。」
ヒカル「ぜってぇはぐれねぇ!」
 火花を散らす二人。
和谷「伊角さん・・おれ、あの二人と一緒に行くの、やだ。」
伊角「なんだ?和谷もはぐれそうになったらオレが軌道修正してやるから、そんな進藤をうらやましがらなくても・・。」
和谷「う、うらやましくなんかねぇよ!」
伊角「あ、あそこ、フクと本田がいるぜ。」
フク「遅かったねぇーー。」
和谷「ごめんごめん。いろいろあってさ・・。」
本田「あっちの神社の参道にはいろいろな出店がでてたみたいだよ。」
ヒカル「出店!?いいねー。行こう行こう。」

 鳥居をくぐって、広い参道へ。
 そこは、小さい子供を連れた家族連れやカップル、友達同士といった人々がわいわいと楽しんでいる。奥の境内を抜けると、広い広場にでて、そこでは盆踊りが行われているようだった。景気のいいお囃子と、太鼓の音が響いている。

ヒカル「うわぁ、たこ焼きもいいなぁ・・、イカ焼きも・・あ。あ、トウモロコシもある。」
あかり「もう、ヒカルってば、食べ物ばっかり。」
ヒカル「だって、出店の食べ物ってうまいじゃん。」
あかり「ほら、あっちに、金魚すくいがあるよ。小さい時一緒にやったよね。」
ヒカル「ああ、あの時二人とも1匹もとれなくてさー。」
あかり「そう。それで私が泣いちゃって。ヒカルもつられて泣いてたよね。」
ヒカル「あ、あれは、オレもまだ幼稚園だったし・・。」
奈瀬「あら、進藤と藤崎さん、いい雰囲気。」
 その時ヒカルとあかりの間に割ってはいる人物が・・。その手には金魚の2匹入った袋。
ヒカル「と、塔矢!」
アキラ「さ、進藤、これを。」
 むりやりヒカルの手に金魚の袋を握らせる。
ヒカル「わぁ、どうしたの?これ。」
アキラ「ボクが取ってきたよ。だから泣かなくてもいいんだよ。」
ヒカル「誰が泣いてんだよ・・。」
アキラ「いや、待てよ。泣いている君もいいかも・・。」
 なにやら想像しはじめるアキラ。
ヒカル「なんか・・寒気がする・・。あ、あかり。この金魚やるよ。」
あかり「いいの?せっかく塔矢君が取ってきてくれたのに・・。」
ヒカル「いいの。ほら。」

和谷「進藤!たこ焼き食う?何個かやろうか?」
ヒカル「お、食う!食う!」
 そこへまた走ってくるおかっぱ。手にはたこ焼き。
アキラ「はい、進藤。たこ焼き。」
ヒカル「なんなんだよ、お前。」
アキラ「さ、さ、あーんして・・あーん。」
ヒカル「オレ、和谷からもらうからいい。」
アキラ「ふざけるな!」
 ギッと和谷を睨むアキラ。その瞳には炎が・・。ぞっとする和谷。
和谷「お、オレは伊角さんと食べるから、進藤は塔矢と食べろよ。じゃっ。」
ヒカル「あ、わ、和谷ぁ。」
アキラ「和谷君もああ言ってくれてるんだ・・。さ、進藤。」
ヒカル「しょうがねぇなぁ。」
アキラ「はい。あーん。」
ヒカル「オレ、こっちのもう一本のつまようじで自分で食べるからいい。」
 もう1本のつまようじを、ぽいっと捨てるアキラ。
ヒカル「ああーー!!」
アキラ「失礼。手が滑って落としてしまった。」
ヒカル「わざとだろ?!」
アキラ「わざとだって?キミはボクを疑うのか?!」
ヒカル「・・・もうやだ・・。」

 気がつくと、周りに院生仲間の姿なし。
ヒカル「お前が、ぐだぐだいうから、みんなとはぐれちゃっただろ。」
アキラ「・・・。」
ヒカル「もう、困ったなぁ。」
アキラ「・・・チャーンス。」
ヒカル「なんか言った?」
アキラ「いや、別に。コマッタナァ。」
ヒカル「・・なんか白々しい・・。」
アキラ「あ、進藤。あそこにいるのは和谷君じゃないか?」
ヒカル「どこぉ?見えないけど。」
アキラ「僕に任せたまえ。さぁ、こっちだ。」
ヒカル「おわぁ、ちょっと塔矢!手、手離せって!」
 ヒカルの手をどさくさに紛れて握りしめ、アキラは人並みの中をどんどん進んでいく。
アキラ「見失ったかな?」
ヒカル「おま・・・お前、ほんとにこっちに和谷を見つけたのかよ!」
アキラ「ああ、確かに。」
ヒカル「なんかさぁ、人が少なくなってねぇ?」
アキラ「気のせいだろ。」
ヒカル「それに電灯もなくてなんだか暗いし。」
アキラ「でもほら、月の光が明るいし。」
ヒカル「なんだか、周りは男女の二人連ればっかり・・。」
アキラ「僕らも二人だ。なんの問題もない。」
ヒカル「あっちの夜店の明るい方へ戻ろうぜ。」
アキラ「ボクは暗い方が好きだが。」
ヒカル「お前の好き嫌いの話じゃないの。みんな心配してるよ。俺たちはぐれちゃって。」
アキラ「大丈夫。僕たちは生涯の・・運命のライバルなんだから。」
ヒカル「わけわかんねぇ。」
アキラ「みんなも気を利かせて二人きりにしてくれたんだよ。きっと。」
ヒカル「はぁ?」
アキラ「さぁ、進藤。みんなの好意を無駄にする事はないだろう。」
ヒカル「な、なに?」
 じりじりとにじり寄るアキラ
アキラ「ボクは浴衣の着付けができるから、多少乱れても平気だよ。進藤。」
ヒカル「げ。」
 身の危険を感じて逃げるヒカル
アキラ「な、なぜ逃げる。」
ヒカル「怖いからだよ!」
アキラ「怖い?ボクが?なぜ?」
ヒカル「目が光ってて怖いし、口がとんがってて怖いし、手がわきわきしてて怖いよ!」
アキラ「目はキミの瞳をとらえるために光っているんだし、口はキミの唇をとらえるためにとがっているのだし、手はキミの体をとらえるためにあるのだから、怖いことはない。全部キミのためだ。」
ヒカル「そっか。オレのためなら怖くねぇな。」
アキラ「そうそう。」
ヒカル「・・・でも怖いーーーーーオレは逃げる!」
 ウルトラダッシュで逃げるヒカル。なるべく人の多い方に逃げる。アキラもすごい早さで追いかけてくるが、ヒカルが人の間をすり抜けるので、なかなかうまく捕まえられない。
 そのうちたどり着く盆踊り会場。

和谷「あ、進藤。おーい。」
ヒカル「和谷・・助かった・・。」
フク「進藤君、どこいってたのぉ。」
ヒカル「ちょっとはぐれちゃって・・。」
奈瀬「そんなに息せき切って走ってくることないのに・・。」
伊角「進藤、塔矢は?一緒じゃなかったのか?」
ヒカル「あんな奴しらねぇ!」
あかり「ヒカルはてっきり塔矢君と一緒だと思ってたのに、違うの?」
ヒカル「一緒だったけど・・振り切ってきた。」
奈瀬「えー、じゃあ、塔矢君一人で迷子?かわいそう。」
伊角「迷子のお知らせで流してもらったほうがいいかな?」
 突然場内放送が。
放送「ピンポンパンポン・・迷子のお子さんを捜しています。身長155センチ、前髪だけ黄色いメッシュを入れている男の子です・・。」
ヒカル「え?」
放送「浴衣を着ています。お友達が・・・・あ、ちょっと!キミ!ガタガタッ」
 放送に雑音が混じる。そして、放送から流れてきたのはアキラの声・・
アキラ(放送)「進藤!聞こえているか?!」
ヒカル「げっ。」
アキラ(放送)「君を待っている。場所はさっきキミが逃げた場所だ。」
伊角「進藤、これって塔矢?」
ヒカル「あいつ!」
アキラ(放送)「ボクはあきらめない。ボクがあきらめないのはキミが一番良く知っているはずだ・・。キミを待っていた2年4か月に比べれば・・ボクはいつまでも待てる・・。」
放送「ちょっと君!やめないか。こら!ぶちっ(放送が切れる音)」
ヒカル「オレちょっと行ってくる。」
和谷「おい、進藤!あぶねぇぞ!」
ヒカル「でもあいつ・・本当に待ってそうなんだもん・・。それこそずっと・・。」
和谷「だからって・・。」
ヒカル「大丈夫。こっちに連れてくるから。」
 そう言って、駆けていくヒカル。
 そして、10分ほどでアキラを連れて帰ってきた。二人の手はしっかり握られている。
 心なしか、アキラの顔がにやついている。

ヒカル「おーい。」
和谷「あ、戻ってきた。」
奈瀬「塔矢君と進藤ってほんと仲良しだったのね。放送で探すなんて・・・。」
フク「どっちかというと、塔矢君の方が迷子みたいだけどね。」
ヒカル「全く、こいつ無茶するからさぁ・・。」
アキラ「うん。でももういい・・。進藤が戻ってきてくれただけで十分だ。」
和谷「なんだ?随分塔矢しおらしくなってるな。」
ヒカル「ええ・・ええっと・・まぁ、いいじゃん。」
和谷「何かあったろ。お前ら。」
ヒカル「ないよ!」
アキラ「ボクの口からは言えないな・・。進藤からあんなことしてきたなんて・・。」
ヒカル「うわぁ!」
和谷「なんだよ、なにした?」
ヒカル「なにもっ、何もしてねぇって。」
和谷「あやしいなぁ・・。伊角さんどう思う?」
伊角「え?えっと、イカ焼きとかおごったとか?」
和谷「・・・伊角さんにきいたオレが馬鹿だったよ・・。」
ヒカル「ほら、みんなさ、そんな事どうでもいいから盆踊り踊ろうぜ!な!塔矢も!」

 そして、夏祭りの締めはみんなで盆踊りを踊ったのでした。チャンチャン。

 アキラとヒカルの間に何があったかは・・ご想像に任せます☆




-----おしまい・・・かな-----

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