彼は彼女を救えるか

あとがき
または作品解題のようなもの

 とりあえず完結、です。
 いろいろ不満はありますが、これが今の私の精一杯というところです。
 こういう連載みたいな形にしたのは初めてだったので、ちょっと余韻に浸ってたらたら書いてみたいと思います。

 ゲーム本編の小夜美シナリオに不満を持たない人は、あんまりいないと思います。あまりにあっさりしすぎていますからね。もっと悩めよ!というのがこのお話を作った発端です。
 まず彩花のこと。ゲーム中ではほとんど何のトラウマでもない感じでしたが、やはりこのことはちゃんと乗り越えておかなければいかんだろうと。
 もうひとつは年の差ですが、このギャップを出すには、小夜美ねーさんの大学生活を描かないといけないんですよね。そちらはあまり踏み込む余裕がなかったので、すれ違いがちのつきあいで不安になって、つい彩花のことを思い出してしまう……というきっかけとして使うにとどめてしまいました。智也が歳の差に悩むのは、小夜美ねーさんが就職してからでしょう、きっと(^^ゞ。
 最後が、唯笑とのけじめ。これはまあ他のシナリオでも同様なんですが。とにかく智也はもっと唯笑を大事にしろと云いたい(^^ゞ。

 読んでいただければわかるとおり、ほぼ一貫して智也視点で描いています。
 当初は小夜美ねーさんの葛藤とかも書くつもりだったんですが、どうやってもそっちの方向には動いてくれませんでした。私の中では、小夜美ねーさんというのはそういうキャラではないようです。
 悩まない、という意味ではなくって(^^ゞ。きっと、智也とつきあうと決めた時点で、彼女は踏ん切りも覚悟もできていたんだと思います。
 小夜美ねーさんが智也に弟を重ねて見ないようになるためには、小夜美ねーさんの心情の変化ではなくて、智也が「男」になることが必要だったと。そういう風に考えています。

 各話に他のヒロインがひとりずつ出てくるのは、最初から狙っていたわけではないんですが、意外にうまくはまりました(^^ゞ。詩音とみなもの役割が(台詞も)かぶってるんじゃん、と思われるかもしれませんが、微妙に違うんですよ。うまく表現できていればいいんですが……。
 彩花は、意識して出しませんでした。彩花の幻(幽霊というとあまりに情緒がない)が出てきて、許してくれる、というのはずるいと思ったので。唯笑の台詞ではないですが、彩花のせいにしてはいかん。
 それに、許してもらう必要はないんですよね。彩花は、もういないんだから。許すも何もない。そのことを、智也が受け入れさえすればいい。
 かといって、ゲームの詩音シナリオのように「過去でしかない」と云いきってしまうのも、なんか寂しい気がしまして。囚われてはいけないけれど、忘れてもいけないと思う。
 なので、最終話に「Memories Off」とつけたのは、ひょっとしたら間違いだったかもしれません(^^ゞ。
 ここで各話についてコメントを少々。

●第一話 僕と生きることが君のしあわせ

 タイトルは『ああっ女神さまっ』のイメージアルバム(っていうのかな?)「Singles+」所収の歌からいただいています。タイトルからは想像もできないほど悲しい歌です(;_;)。その内容を踏まえて、このタイトルをつけています。
 あらすじを考えたとき、各話に一応テーマを設定してまして、第一話は「幸せな日常」でした。全然違いますな(^^ゞ。ほんとは第一話はラブラブな話にして、それがちょっとしたことで崩れる、という展開を考えていたんですが、ラブラブな話にするとどうしてもじみぃさんの「恋しさとせつなさと力強さと」に似てしまいそうだったので、最初っから重い話にしてしまいまいた。

●第二話 なみだの意味

 これも同上「Singles+」からいただいています。
 二話のテーマは「すれ違い」。気持ちが噛み合わなくなる過程、です。
 プロット段階ではかおるはもっとお気楽な感じで、「それって運命ってヤツ?」という風に智也を冷やかして、智也がその言葉に動揺する……って感じでした。最近、自分の中でかおるの地位が上がっていまして、そのせいか、役割が少し変わりました(^^ゞ。

●第三話 きみを変えられない, ぼくが伝わらない

 これもまた『ああっ女神さまっ』です。三女神の声優さんたちのユニット「Goddess Family Club」の歌です。この話では、唯笑の気持ちを表すものとしてこのタイトルをいただきました。
 三話のテーマは「決定的な誤解」。でもむしろ、唯笑の言葉のほうが重要でしたね。

●第四話 This may be the last time we can meet

 これは説明不要だと思いますが、彩花の歌です。本来、前向きなメッセージが込められた歌ですが、あえてネガティブな意味で使わせてもらっています。小夜美ねーさんに「これが……最後のデートだね」この台詞を云わせたくて、「かれかの」はできたからです(^^ゞ。
 四話のテーマは「破局」。そのままです。
 智也が自分にシーツを掛けてくれたことを知って、朝からご機嫌の詩音がちょっとかわいいと思ったりしてます(←バカ)。

●第五話 Memories Off

 これも説明不要ですね。ちょっと話がそれますが、「Memories Off」って、厳密にはどういう意味なんでしょうね。私ははじめ「忘れてしまうこと」なのかな、と思っていたんですが、今では、「記憶を思い出に変えていくこと」なのかな、なんて思ったりしてます。そういう思いを込めて、このタイトルにしました。
 五話のテーマは「再生」です。みなもの台詞は、自分で書いてつらかったです(;_;)。
 実はプロット段階では、彩花が登場していましたが、上記の考えに基づいて遠慮してもらいました。

 なんかいっぱい書いてしまいました(^^ゞ。
 タイトルとは裏腹に、「彼」は「彼女たち」に救われてばっかりでしたが(^^ゞ、最後の彼の勇気が、彼女たちみんなの救いになっていれば……いいなあ、と思います。
 ご感想など、いただければ幸いですm(__)m。


2001.4.10

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