ここより永遠とわ

−後編−

    5

「ごめんね……パパ。つい嬉しくって」

 少しして、薙は武から体を離した。涙をぬぐいつつ、照れ笑いを浮かべる。

「いいんだ……でも、いつから気づいて?」

「初めて逢ったときから、知ってたよ」

「……本当に?」

「うん」

 なにもかも知っていて、それなのになにも云わず、ただ待っていたのか。俺が思い出すその日まで。
 どんなにかつらかったろう。薙が時折見せていた切なげな様子を思い浮かべ、武の胸は痛んだ。あんなに大切だった人たちのことを、どうしてこんなにも忘れてしまうのだろう。

「しょうがないわ……それが転生するってことだもの」

 武の心を見透かしたように、薙が云った。そして万葉に向き直り、その手を取った。

「でも、今のママは違う……」

 悲しみに沈む声。武は薙の最初の言葉を思い出した。

「螢の記憶しかない……そう云ったよな、薙。どういうことなんだ?」

「……」

 すぐには答えず、薙は万葉の手を優しく握りしめた。万葉も穏やかな笑顔で、その手を握り返す。螢の記憶しかないのなら、聡子の姿をした薙のことも知らないはずだが、やはりその魂が自分の愛しいものだと、わかっているのだろうか。

「あのとき……ね。太祖と戦ったとき。覚えてる?」

「もちろん……。忘れるはずないよ」

 万葉と沙夜、そして武をも黄泉に道連れにしようとした太祖。武と沙夜の闇の力では、太祖は倒せない。万葉は武の中の「神」の力を自らに移すことで、闇を打ち払う力を発揮し、太祖を黄泉に封じ込めたのだった。

「ママはもともと御剣の使い……「戦士」の器ではないわ。でもあのときは、私を手にして、自ら戦った。そして……最後には、「神」をその身に降ろした……」

 そう、武の内なる神の力を自身で引き受けるということは、英霊を降ろして、神剣の真の使い手となることに他ならなかったのだ。
 しかし、万葉はもともとその器ではない。器を越えて注がれた力は、魂をあふれさせてしまう。そうなると――。

(あなたの魂はどこにもなくなってしまうの。死んだと同じことよ)

 そう説明したのは、澪だったか。

「まさか……」

「そう――自分の器以上の力を宿して、ママの心は壊れてしまった……。ただ螢としてパパに出逢い、愛し合ったという記憶だけを残して……」

「そ……ん、な……」

 武は、足下が崩れ落ちるような感覚を味わった。
 なぜ。なぜ万葉だけが、こんな目に遭わなければならないんだ。彼女にどんな罪があるというのだ。……罪を犯したのは、自分ではないか。

「俺の……せいなんだな……。俺が沙夜を選び……神として生きることを拒んだから……。だから……」

「パパ……」

 武は全身を震わし、泣いていた。後悔では、なかった。ただ「なぜ」という思いが、胸を埋め尽くしていた。
 なぜ、こんなことになる。いったいどうすればよかったというのか。誰かを選んだら、誰かを切り捨てるしかないのか……。
 もう思いを言葉にすることすらできず、ただ唇を噛みしめて涙を流す武。
 その頬に、ふと、白い指が触れた。
 万葉が手を伸ばして、武の頬を包んだのだ。武の痛みを分かち合いたい。涙でいっぱいの瞳が、そう語っていた。

「どうして泣いているの、鷹久? そんなにつらそうな目をしないで。私が……側にいるから……」

「万葉……!!」

 武は、ついに万葉を抱きしめた。そうするしかなかった。
 万葉の手が武の背に回され、きつく抱き返してくる。一点の曇りもない、愛と、信頼を込めて。
 ――今この瞬間、俺は沙夜も万葉も、二人とも裏切っているのかも知れない。
 そう思いながらも、しかし、武は万葉を抱く手を緩めはしなかった。
 万葉を、救いたい。
 傲慢かも知れない。自己満足かも知れない。だけどそれでも。
 万葉を、救いたい――。

    6

 安らかな寝息を立てる万葉の髪を、武がそっと撫ぜる。先ほどまで、その手はずっと万葉の手に握られていた。
 ようやく巡り会えた。その喜びに、万葉の寝顔は穏やかだ。武が病室に入ったとき、最初に見た人形のような生気のない顔とは比べものにならない。そのことに安堵しつつも、武の心は痛んだ。

「どうして……螢なんだろうな」

「え?」

 武の呟きに、側に腰掛けていた薙が面を上げる。

「なぜ螢の記憶だけが、残ったんだろう。……やっぱり、俺に裏切られたことを、忘れたかったからなんだろうか」

 苦渋に歪む武の横顔を見て、薙は目を伏せた。そして、小さく首を横に振った。

「ううん……そうじゃないと思う」

「……え?」

「本当なら、ママの心は完全に壊れてしまってもおかしくなかったの。それなのに、なぜ螢の記憶だけが残ったのか。それはきっと、ママが絶対になくしたくない想いだったから……じゃないのかな」

「……」

「パパと出会えたこと、パパに愛されたこと、……そして、パパを愛したこと。これだけは、なにがあっても絶対に失いたくなかった。その想いが、かろうじて螢としての記憶だけを繋ぎ止めたんじゃないかって……私はそう思うの」

「薙……」

 そうまで、自分を愛してくれたのか。武は目を閉じて、こみ上げてくる胸の熱さに耐えた。その様子を見つめていた薙は、思わず武の手を取った。

「薙?」

「パパ……お願いよ。ママの側にいてあげて」

「……!」

「パパの気持ちはわかってる。でも、ママにはパパが必要なの。お願い。ママを見捨てないで」

 見捨てる? 薙の一言が、武の心を刺し貫いた。
 誰も見捨てることなんてしたくない。しかし、誰かを選ぶということは、誰かを捨てるということではないのか。
 結局、俺はここへなにをしに来たのだ。万葉を救いたい。ならば、沙夜を捨てるしかないのか?
 薙の祈るような視線と目を合わすこともできず、武はただ立ちつくした。

    *

 暗い廊下。そこに座り込んで、もうどれだけ時間が経っただろう。
 あのあと、逃げるように病室を飛び出し――いや、文字通り逃げてきたのだ。あまりにも重すぎる選択に耐えられず、武は背を向けて逃げ出した。

「すまない……少しだけ時間をくれ」

「パパ……!」

 薙の悲鳴のような声が耳に残っている。どんなに失望しただろうか。いや、むしろ自分を追いつめてしまったと、悔やんでいるかも知れない。だが、薙に問われるまでもなく、万葉の元に残るのか、去るのか、それこそが最初に出さなければならない答えだったのだ。

「沙夜……俺はっ……」

 どうすればいい。その言葉が、喉に支えた。自分で決めなければいけない。そうわかっていたから。だけど――。

    *

 電話の音が響いた。
 胸騒ぎがして眠れずにいた沙夜は、時計を見ながら受話器を取った。午前2時31分。

「……もしもし?」

「……」

 答えはない。しかし沙夜には、受話器を取る前から、それが誰からの電話かわかっていた。

「武? ……どうしたの?」

「……」

 やはり答えはない。
 沙夜はそれ以上問いかけようとせず、じっと武の言葉を待った。
 沈黙が流れる。その沈黙の深さが、武の苦悩をありありと沙夜に伝えていた。
 私のために、彼は苦しんでいる。そう思うと、沙夜は涙があふれそうになった。

「……らないんだ」

「――え?」

「わからないんだ……もう、どうしたらいいのか……わからない……」

 嗚咽。受話器の向こうで、武が泣き崩れるのがわかった。
 今まで一度も見せたことのない姿。年上の自分を「守る」と云ってくれた、どんな困難にも毅然と立ち向かった武が、為す術もなく涙を流している。沙夜は愛しさと切なさに胸が押しつぶされる想いだった。
 今すぐ逢いたい。逢って、抱きしめてあげたい。私の胸で、泣いてほしい。ひとりぼっちで泣いていた私を、あなたがあたたかい手で包んでくれたように……。
 けれど、今はそれが叶わない。言葉だけしか、彼にあげられるものがない。
 それなら……。

「武の信じる通りにして」

「……え……?」

「あなたがそうすべきだと信じたことを、やればいいの。迷うことなんてない」

「俺が……信じたこと……」

「そう、それでいいの。……私は、あなたを、信じているから……」

「沙夜……」

 正しい答えなんか見つけなくていい。沙夜はそう云っていた。あなたが選んだ道を、私も選ぶから。信じてる。
 武は涙を拭うと、微笑みを浮かべた。そこには強い決意が、あった。そしてそのことは、沙夜にも確かに伝わっていた。

「ありがとう……沙夜。ごめんな」

「ううん、私の方こそ……。電話くれて、嬉しかった」

「俺も。……じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」

 恋人たちの当たり前のような挨拶を交わして、二人は受話器を置いた。
 武は、力強い足取りで、万葉の病室へ戻る。
 そして、沙夜は――、その場にくずおれて、静かに涙を流し続けた。その面には、しかし、至福の表情があった。

    7

 病室のドアをそっと開ける。
 薙はベッドにもたれかかって寝てしまっている。泣いていたのだろうか? 武はまた少し心が痛んだ。
 そして、万葉は上体を起こし、薙の頭を優しく撫でていた。まさに母が娘を愛おしむように。
 その瞳には未だ悲しみの色が深かったが、武が帰ってきたことに気づくと、花のように微笑んだ。

「お帰りなさい。……よかった、帰ってきてくれて。目を覚ましたらあなたがいなかったから、私、また夢を見たのかと思っちゃった」

「……」

「でもね、薙が『パパはすぐ帰ってくるから』って云ってくれたから、安心できたわ」

 ……嘘だ。安心なんかできるはずがない。記憶をなくしていても、今の武が鷹久とは違うことに、万葉は気づいているはずだ。そして自分が螢ではないことも。今の状況に違和感を感じ、不安な気持ちでいっぱいのはず。
 そしてそんな万葉が頼れるのは、武と薙しかいないのだ。
 武はまた少し迷った。けれど、心はもう決まっている。これ以上ためらえば、周りの誰もを傷つけるだけだ。
 優しい、染み通るような笑顔を浮かべて、武は万葉に近づいた。万葉が小首を傾げて、武を見る。

「……ちょっと、散歩しようか」

「散歩?」

 万葉は薙の方をちらっと見た。薙を置いていっていいのか、少し迷った様子だったが、こくんと頷いた。
 武は万葉を抱き上げる。軽い。この華奢な体に、どうしてこんな運命が課せられたのか。
 万葉を腕に抱いたまま、武は病室を出た。万葉が切なげに、武の胸に頬を寄せた。

    *

「わあ……」

 病院の裏手には、小さな湖が広がっていた。周りには木々が生い茂り、心和ませる空気に満ちている。
 そしてなにより、螢と鷹久、二人が初めて出逢った場所に似ていた。万葉が思わず感嘆の声を上げたのは、そのせいだったに違いない。
 武もそのことに気づいていたが、なにも云わず、木陰のベンチに万葉を降ろした。

「寒くないか?」

「ええ……大丈夫」

 武は万葉の隣に腰掛け、しばらくは無言で湖面を見つめていた。万葉もやはり黙ったままで、そんな武の横顔を見つめている。
 そうして、どれぐらいの時間が経ったのか。武は万葉に向き直り、正面からその瞳を見つめた。

「螢……いや、万葉。これから俺の話すことを、よく聞いてほしい」

「……」

 万葉は答えない。ただ武のまっすぐな視線を受け止め、その一言一句を聞き漏らすまいとしているようだった。

「俺たちが出逢ってから、長い……長い年月が、流れた。今の俺は、安倍鷹久じゃない。御門武だ。同じように、君の名は高原万葉……。螢じゃない」

「武……万葉……」

「そうだ」

 いったん言葉を区切り、武は立ち上がった。半歩前に踏み出し、再び湖面に視線をさまよわす。万葉もまた、武の動きをじっと目で追った。

「そして……今の俺には……」

「……」

 武は振り向き、もう一度万葉の瞳を見つめた。もう、逃げないと決めたから。

「今の俺には、愛しているひとがいる」

「……」

 万葉の表情に、変化はない。武のその言葉が、どれだけ衝撃を与えているのか、伺い知ることはできなかった。それでも武は、目を逸らさずに話し続けた。

「そのひとの名は、常磐沙夜。俺たちの担任だった先生だ。……覚えてないか」

 風が吹く。万葉の長い髪を風がなぶっていく。万葉は左手を挙げて、髪を押さえた。だからその一瞬の表情が、武にはわからなかった。

「彼女は俺と同じ血の宿命に苦しんでいた。自分は誰からも愛されるはずがないと、ひとりぼっちで泣いてた。俺はそんな彼女を、ずっと守っていきたいと思ったんだ。だから……」

 だからもう、お前とは行けないんだ。
 その一言が、どうしても言葉にならなかった。
 万葉はやはり無言のままで、武の瞳を見つめ返している。何度も目を逸らしてしまいそうになるのを、武は唇を噛みしめて耐えた。

「憎んでくれていい。お前を裏切ったこの俺を。そして俺たちのために、心まで失ってしまったお前を、もう一度捨てようとしているこの俺を。だけど俺は……嘘をついて、お前を抱くことはできない。そんなことをしたら……俺たちの千年の絆が……すべて嘘になってしまう……」

 いつの間にか、武は泣いていた。涙を拭おうともせず、万葉に語り続けた。

「だから、俺は……俺は……」

 その続きが、どうしても言葉にならない。別れを告げるその言葉が。
 これまで、武はずっと万葉の想いから逃げていた。彼女を裏切ったという後ろめたさから、万葉に冷たく振る舞い続けた。
 しかし、今、初めて武は万葉と正面から向き合おうとしていた。彼女の思いを、彼女の傷みを、受け止めなければ。そうしなければ、なにも新しく始められはしない。
 そしてそのためには、沙夜への偽りのない愛もまた、示さねばならなかった。たとえそのことが、万葉をさらに傷つけるとしても。その傷もまた、武自身が背負わなければならないものだった。
 だから。万葉と別れる。そのことから、始める必要があった。

「俺は……」

 血のにじむほど拳を握りしめて、まさに血を吐く想いで言葉を紡ぎだそうとした、そのとき――。

「もういいのよ、武」

 風が天女の囁きを運ぶ。万葉は乱れる髪をまた手で押さえながら、微笑んだ。
 その微笑みの優しさを、穏やかさを、切なさを、――悲しさを、武は生涯忘れなかった。そして彼女の愛を。

「私が愛した人が、あなたでよかった」

 それが、別れの言葉だった。
 ……すまない、そう云いそうになるのを、武はこらえた。謝ってなんかほしくないはず。いや、なぜ謝る必要があるのかと、万葉は云うだろう。
 ただ腕を伸ばして、万葉を抱きしめた。万葉もまた武の背に手を回す。
 ほんの束の間の抱擁。
 体を離し、最後にもう一度だけ見つめ合った後、武は身を翻した。
 万葉はその後ろ姿を見送っている。
 涙は、なかった。

    8

 翌日。帰りの電車の中で、武は薙のことを思い出していた。
 あの後、木陰から薙が姿を現したのだ。

「とってもパパらしいけじめの付け方だったわね」

「……見てたのか?」

「バッチリ」

 おどけて見せる薙。けれどその顔はすぐに涙に歪んで、武の胸に顔を埋めた。武はその頭を抱き、髪を優しく撫ぜた。

「すまない、薙……。俺は、行くよ」

「わかってる……。ううん、最初からわかってたの。パパがどうするか、なんて……。私の方こそ、わがまま云って、ごめんなさい」

「わがままなのは俺だよ。父親失格だな」

「そんなことない。薙のパパはパパだけだから……」

 そこで薙は顔を上げて、武の目を見つめた。

「離れていたって、パパはパパよね。そうでしょう?」

「ああ、もちろんだよ」

 武の言葉に、薙は輝くような笑顔を見せた。そして、ぱっと武から体を離すと、万葉の方へ向かって走り出した。

「ママのことは心配しないで。私がついてるから。……お幸せにね、パパ!」

「あ……薙!」

 思わず呼びかけてしまう。薙は足を止めて、振り返った。

「なに?」

「その……いつでも遊びに来いよ。栞も……喜ぶと思う」

「……そうだね……」

 少しだけ、寂しそうな笑顔を薙は見せた。その表情に、失言だったか、と武は後悔したが、次の瞬間には、弾けるような笑顔が目の前にあった。

「いつかまた……ママと一緒に会いに行くわ」

「ああ……そうだな、いつか……」

 いつかきっと、そんな日が来る。そのために、今日はこうして別れていくのだから。

「じゃあね、パパ」

 大きく手を振って、薙はまた走り出す。その後ろ姿を見送って、武は新しい一歩を踏み出した。

    *

 駅のホームに、電車が入ってくる。
 ホームには、沙夜が一人で立っていた。栞と汰一も迎えに来ていたが、少し離れた場所から沙夜を見守っていた。
 やがて電車が止まり、乗客が次々と降りてくる。その中に武の姿を見つけ、沙夜は小走りに近づいた。武も沙夜に気づき、ホームを走ってくる。
 再会を果たした恋人たちは、しばしの間、なにも云わずただ見つめ合っていた。そして武が微笑んで、云った。

「……ただいま」

 沙夜もまた、微笑みを返す。この沙夜の笑顔もまた、武にとって終生忘れられないものとなった。この笑顔があればこそ、俺は帰ってこれたのだと。

「お帰りなさい」

 ほかに云うべき言葉はなかった。武は帰ってきた。約束を果たして。それがすべてだった。
 そして、その沙夜の笑顔に、太一は感嘆の溜息をついた。それから、傍らに立つ栞に聞かせるでもなく、呟いた。

「やっとわかったよ。先生が、どうして武のことをあれだけ信じられるのか。先生は、武のすべてを宥してる。だから裏切りだとか、そんなことには意味がないんだ。それが彼女の『信じる』ということ……それが彼女の、千年の愛だ」

 たとえば武が沙夜を手にかけようとしたとしても、沙夜は笑顔で逝くだろう。あの雪の日の少女のように。
 それは諦めや自己犠牲の精神などではない。ただ武だけが、沙夜の生きる意味だから。

「千年の愛……か」

 その言葉を噛みしめるように呟くと、栞は一つ大きく伸びをした。

「あーあ、かなわないなあ……。さ、行こ、汰一ちゃん」

 云うや、栞はもう走り出していた。慌てて汰一がその後を追う。

「たけちゃん、お帰りぃ」

「おう、なんだ、お前らも来てたのか」

「なあに、せっかく迎えに来てあげたのに、その言い草。……先生も! 生徒の前でそんな堂々と腕組んだりしてていいんですか?」

「いいじゃない、今日ぐらいは。……ねえ?」

 沙夜が甘えた声で、武を見上げる。武は照れて頭をかくばかりだ。
 穏やかな風景。
 彼らの本当の未来が、ここからはじまる。





2000.7.13

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