整備編4

エンジン下ろし

フレームからエンジンを下ろすには写真のボルトを順番に外して、進行方向向かって右側に、ヘッドを後方に倒しながら引き出します。
僕は1、3、4、5と外し、エンジンをかかえながら2を抜きました。

かなりの重さなので、二人での作業をおすすめします。四苦八苦しているとフレームが傷だらけになること必至です。フレーム右側は段ボールなどでカバーしておくことも忘れずに!



エンジン取り付けはもっと大変です。下ろしたとき以上にフレームに傷がつきます。フレームすべてに段ボールなどでカバーすることをお薦めします。僕は彼女に手伝ってもらいながらも、なかなかうまく入らずに3時間もかかってしまいました。

しかし、終わってみるとコツさえわかっていればもっとすんなりいったなぁと思ったので、今後のために記しておきます。

進行方向右側にエンジンを傾けるということは忘れて、図の指で指している3点だけをクリアすることだけ考えた方がいいようです。
少し後方に傾けてほぼ水平のまま押し込んでいくと前方のでっぱりが入って全体にストンと落ちますから、そうすれば上の袋ナットも通 過できます。

試行錯誤しているうちにフレームがボロボロになりました。タッチアップ面倒だなぁ・・・脱着にはバカ力の友人を呼んで頼むのが一番ですね!!

追記:エンジンを横に倒して置き、上からフレームを載せる方法が一番楽で確実だと思います。
シリンダーヘッド




開けてビックリ玉 手箱! とにかくすごいカーボン

シリンダーヘッドカバーの下にはシリンダーヘッドガスケットA、シリンダーヘッドガスケットB、シリンダーヘッドガスケットCがつきます。(写 真左上)

分解の順序
1:シリンダーヘッドカバー
2:コンタクトブレーカー、スパークアドバンサー
3:カムスプロケットボルト
4:R/Lシリンダーヘッドサイドカバー
5:ロッカーアームピン、ロッカーアーム
6:カムシャフト
になります。
マニュアルにはありませんが、カムスプロケットのボルトはR/Lシリンダーヘッドサイドカバーを取る前に外してしまう方がいいです。 カムシャフトの支えがなくなってしまうと作業しにくいです。

マニュアルにもありますがカムシャフトを抜くときは 、ローターのLTマークを合わせて、カムスプロケットのLマークを上(やや前上)にして、カムシャフトのガバナ合わせノックを上にして右側に引き抜きます。カムスプロケットにもカムケースにもカム部がすんなり抜けるように穴が空いています。

あ〜、バラすのって本当に楽しいなぁ〜!! どんどんバラして生きていたいです。

   
ヘッドボルトを締める順序は内側から対角線に!


EXの当り面はカーボンをかんだりして無惨でした

半日かけて摺り合わせしました
面 研まではいかないが、拒みだけはとれた

EX側はともにガタガタだったので摺り合わせに時間がかかりましたが、IN側は荒れもなく良好だったので1時間程の摺り合わせで終了。
このとき最も注意しなければならないのはバルブステムやバルブガイドにコンパウンドが付着しないようにすることです。細かいコンパウンドの粒は拭き取ったつもりでも残っていることがありますから、細心の注意が必要です。

   
摺り合わせの三種の神器、たこ棒とバルブコンパウンド、光明丹。でも光明丹は必要ないかも、よーく見れば当たりの具合はわかります。最後にガソリンか灯油を注いで漏れてこなければオッケーですから。

余談ですが、左2枚目の写真で見えますが、ポート内は段差だらけで吸気排気効率が悪そうです。排気側はバルブの逃げのために掘られた深い傷が、吸排気側ともにバルブガイド組み付けのための盛り上げが雑ですごい段差になっていました。リューターがあったらツルピカにできるのに・・・

面研はMさんからの伝授です。ガラス屋さんからガラスの破片をもらってきて、その上にエンジンオイルとバルブコンパウンドを敷いて、ひたすらひたすら8の字で研摩します。1時間も研摩すれば1ミリ位 はいけるのではないでしょうか。
 今回は面研までいかない0.1ミリくらいでしょうか。拒みがあったので、それがなくなりすべての面 が接地したところでストップしておきました。

これまた余談ですが、今回パーツクリーナーにMOTOメンテナンス誌でも度々登場するジェットクリーナーを使用してみました。どぶ漬け30分〜1時間位 、水で洗い流すとピッカピカ! 知らずに素手で作業したら、翌日手の皮がペロンとむけちゃうくらい強力です。水を使うので錆止めを忘れずに!
ワールド物産のホームページ
http://www.worldbussan.co.jp/

プラグをしめて、バルブをはめてギュッと押し付けてガソリンを注いでみたら1ケ所だけポタポタと漏れてきたので、再度修正して出来上がり。



前外側の2本、シリンダースタッドボルトA(90034-286-020)は途中にゴム(?)が止めてあります。これはなにかと思ってバイク屋さんに尋ねたら、オイルが落ちるスピードをゆるめているものと教えてくれました。確かにオイルの通 り道!ダムみたいに軽くせき止めているのね。

片一方のゴムが切れて落ちていたので、スタッドボルトを注文しに行くと『ゴソウダンパーツ』でした。 そこで、オイルにも熱にも強い接着剤でくっつけようと思っていましたが、液状ガスケットがオイルにも強く200℃まで耐えられるということを思い出したので、そいつで補修しました。

どうか末永く落ちないで頑張っていただきたい。

ちなみに、クランクのコネクティングロッドとピストンの間にはベアリングがないのだ! 最初見た時は落としてしまったかと思ったよ。フリクションロスの際たるものだ。4stはこんなもんなの?
バルブ







バルブはこんな状態でした。カーボンが堆積して完全には閉じていなかったと思われます・・・

バルブスプリングコンプレッサーを使用してバルブコッターを外すとバルブスプリング、バルブが取れます。
外したバルブなどはどの位置についていたか忘れないように気筒ごとに分けておきます。

バルブステム径は以下の通りです。

標準値 使用限界
IN 6.975〜6.99 6.95
EX 6.955〜6.97 6.93

んで、マイクロメーターで計ってみたらINのRが6.982、Lが6.975ありました。EXはRL共に6.955でした。(新品のEXでも6.965しかありませんでした。)使用限界まではきていませんが、EXのRの傘の部分が曲がっていたので交換。R燃焼室には小さな何かが暴れた無数の傷があったので、この影響でひん曲がったのかもしれません。

バルブ磨きはドリルチャックにバルブをくわえて 100番から始めました。このときに回転させるとステムなどの曲がりがわかります。
バルブガイドとのクリアランスが重要だとはわかっていますが、シリンダーゲージなどもっていないので計っていません。バルブをガイドにさしてガタ(遊び)がないか、だけしかチェックしていない手抜き測定・・・
   
    下写真、右手前は新品です。
   
ワコーズのガスケットリムーバー(ガスケットのはくり、カーボン除去用、強力です!)でカーボンを落としてから磨いて磨いてここまでにしました。これ以上やると形が変わってしまうので、完全鏡面 にはしませんでした。当たり前だけどバルブってすごーく硬いね!

バルブシートの話 70年は有鉛ガソリンの時代です。バルブシートも現在の無鉛ガソリンには対応していないモノです。有鉛ガソリン中の鉛がバルブ系の潤滑剤になり、冷却効果 を果たしていたのは事実です。

以下、モトメンテ誌からの抜粋要約です。
『二輪は四輪に比べて負荷が小さく軽いので、高速で連続、しかも長距離運転でもしない限り大丈夫。普通 の街乗り程度では問題になるほどではない。理由は重い列車の荷重にさらされている鉄道のレールのように、鍛造(に近い)効果 が作用して強度が増しているから。』
『内燃機加工ショップIボーリングでも、当時、未対策バルブシートを対策済みバルブシートに入れ替えて欲しいというオーダーがかなりあったそうです。社長の話では両者に素材の違いは特に感じなかったとのこと。また、無鉛ガソリンを使っても急速に問題が生じた例も無かったということです。理由はわからず』
ロッカーアーム

悲しいことにロッカーアーム(14431-312-010 )はもう出ません・・・
部品取りエンジンを入手しておくか、特注で作ってもらうか・・・

ピストン

ずらをかぶったピストン君

ピストンピンと直角方向のスカート部を測る
ピストン外径は写 真左下のようにして測ります。

  標準値 使用限界
250 55.97〜55.99 55.9
350 63.97〜63.99 63.9

今回計測してみたら左右共に63.98でした。形状からスカートの下になるほど径が大きいので、最も値が大きいところを選びました。目立った傷もなく良好だと思う。
ただ、右ピストンは異物が暴れ回ったおかげで、ヘッドが傷でズタズタだが・・・
   
汚れを落とすとピストンヘッド頂部の荒れが気になる。が、きれいに仕上げようと思うとかなり削らなくてはならないのでかるく磨いた程度で済ませました。圧縮が落ちてほしくないから!
ピストンリング


  刻印は製造会社によって異なります
  R---リケン
  N---ニホンピストンリング
  T---帝国ピストンリング

新品で購入した350用ピストンリング(13011-391-004 写 真下)はオイルリングが標準(?)になっていました。オイルリングに上下はなく、トップリングはRの刻印がある側を上にして、セカンドリングも刻印を上に(オイル掻きがある方を下向き)セットします。

ピストンリング合い口隙間(シリンダーにリングのみはめて隙間をシックネスゲージで測る)は350の場合標準値が0.2〜0.4、使用限界が0.8になります。 新品が0.32、今まで使っていたものが0.67ありました。限界まではきていませんが、もちろん交換します。

   
極端ですが、新品の断面図は左図のようになっています。

カムチェーンテンショナー

ロックボルトをゆるめてアジャストボルトをゆるめるとバネの力で自然にカムチェーンが張られます。
使用後はゴムのスプロケになっている。
マニュアルには油圧自動テンショナーで調整の必要がないと書かれていますが、嘘です!
バネの力でプッシュバーがカムチェーンテンショナーローラー(小)を押してカムチェーンのたるみを無くしています。

MOTOメンテ誌(INDEX2)にCB750のレストア記事があったのですが、ゴムのローラーをCB450のアイドルギア(スプロケット式)に替えていました。メカノイズは増えるがカムチェーンの作動はスムーズになるとありました。確かにコマ飛びもなくなりそうだし、ちょっと気になっています。

カムシャフト

パッと見はきれいそうですが、カムの頭頂部に素穴が多数!作りの悪さにショックです・・・

カムシャフトの支持は両側2点のベアリング無しときた。CB72ではベアリング4点支持だったことを考えると手抜きにも思えてしまう。

クラッチ
クラッチはフリクションディスクが8枚、クラッチプレートが8枚(一番奥にクラッチプレートAが1枚あり)の構成。

フリクションディスクは厚みをはかる。使用限界は2.3ミリ、標準で2.62〜2.78ミリ。測ってみたら2.67ミリもあった。前オーナーが交換したばかりだったのだろう。 ちなみに新品で2.7ミリ。

250と350ではクラッチスプリングのみ違います。
350のクラッチスプリングは標準値が31.94、使用限界が30.5ミリです。250は前者が35.5、後者が34.2です。250の方が長いのですが、バネの力が違います。

測ってみると標準値ありました。相当にかたいバネだからそう簡単には縮まなそう。
組み立て

組み立てはマニュアルに従ってやれば問題ありませんが、注意すべき点はカムスプロケットを死んでも落としてはならないということと、カムチェーンテンショナーはカムシャフトを取り付けた後に取り付けるということです。カムチェーンにテンションがかかるとカムシャフトが入れにくいので。
LRヘッドサイドカバーの取り付け時はロッカーアームがすべてフリーになっているところで行います。これはダイナモローターのLTの位 置ではありません。カムシャフトのカムがロッカーアームを少しでも押し上げているとLRヘッドサイドカバーはひじょうに入れにくくなります。
カムの動きが面白かったので、バルブタイミングについて考えてみました。詳しくはこちらから!

もうひとつ、自分が失敗したので注意点をかいておきます。ダイナモのLTマークのときにカムスプロケットのLマークが真上にくるように取り付けますが、このときにポイントを仮組み
して点火時期のチェックをすることをお薦めします。1コマでもカムチェーンがずれていると点火時期は正規の位 置からかなりずれるのでおかしいとわかるはずです。

その後

振動は明らかに減りました。大きかった振動が小さくなった感じ、振動自体が少なくなったわけではありません。マフラー、リアサスを換えてVXプラグをおごったりしたからエンジン自体がどうなったかということがはっきり言えません。