![]() ![]() 〜シルバー王女とサヤ姫 ⊂ 1 ⊃ |
クレヨン王国という世界の色をすべて司っている王国にシルバー王女という笑顔のかわいい王女様がいました。その髪は月の光を集めたような銀色で、瞳は静かな湖畔の水を集めて作ったように澄んだ銀色をしていました。 かわいらしく、国民に愛されているシルバー王女でしたが、実は12の悪い癖を持つとんでもない王女だったのです。お城の人たちは王女の悪い癖に朝から晩まで振り回されており困っていましたが、王女の笑顔を見るとなぜかすべて許してしまうのでした。
ある日、シルバー王女宛に手紙が届きました。 「なぁに?誰からなの?」 シルバー王女はその黄色い封筒を裏返してみましたが、なにやら動物の足跡が付いているだけで、名前は見あたりません。 「危険な手紙かもしれないのでアール。王女。その手紙はこちらに任せるでアール。」 カメレオン総理はそう言って、シルバー王女からその手紙をもらおうとしましたが、王女は 「大丈夫よーー。こんなぺらっぺらの手紙、何も入ってないかもしれないわ。」 「いやいや、あさってはシルバー王女様のお誕生パーティが行われるのでアールから、王女にもしものことがあったら大変なのでアール。だれか!アラエッサとストンストンを呼ぶのでアール。」 すぐに門番をしていたアラエッサとストンストンがやってきました。アラエッサはニワトリで、立派な「とさか」があり、ネクタイとベストを忘れない常識家でしたが、気難しいところもありました。ストンストンはよく太ったブタで、サスペンダーで緑色のズボンをつり下げていました。ストンストンは、おおらかな性格でしたが、食べ物には目がない性格でした。二人は今は門番をしていますが、それが本業ではなく、本業は「旅のプロ」なのでした。シルバー王女とは1年以上旅をともにして、3人で幾多の苦難を乗り越えました。アラエッサとストンストンはシルバー王女の大事なお友達なのです。 |
「カメレオン総理ー。お呼びですかー?」 「おやつでもあるのけ?」 ストンストンは早速得意の食い気を出しています。 「二人を呼んだのはほかでもないのでアール。この手紙なのだが・・。」 と、さっきの黄色い封筒を差し出しました。 「差出人の名前がないのでアール。君たちの知恵と力を貸して欲しいのでアール。」 「知恵?それっておいしいのけ?」 「あーー?足跡が押してあるのだーー。この足跡は・・どんな動物のだろうか?。」 「それは絶対にニワトリでもブタでもないんだな。大きな丸に小さな三角の指の後が4つ・・。」 「こりゃあ、猫かな・・・。きっとこれを書いた人が猫を飼っていて、猫がうっかり手紙の上を歩いたんだ。」 「猫なら、指がもっと丸いはずじゃなーい?」 シルバー王女は二人の後ろからのぞき込んで言いました。 「じゃあ、犬かな?」 「犬なら、こんなに小さくないんじゃないかしら?」 「小型犬かもしれないぞ?」 こんな時こそ、野菜の精たちに頭を貸してもらうのでアール。」 「そうね。」 シルバー王女は、カメレオン総理から旅に行く前にもらった香水瓶のいっぱい入ったコンパクトを手に乗せて、真ん中のボタンを押しました。するとくるくると香水瓶が点滅し、3つの瓶が立ち上がりました。ふたがシュルシュルッと開いて、中から、3人の野菜の精が出てきました。 まず一人目は、ネギの精の「ネギック」。IQ400の天才高校生です。頭脳にかけては野菜の精の中でぴか一なので、頭を貸してもらうにはちょうど良さそうでした。 二人目は、ゴマの精のゴマータでした。へそ曲がりで意地っ張りなゴマータでしたが、彼女の勘は正解と180度違うので、彼女の言ったことの反対のことを考えれば、正解に近づけそうです。 三人目は、梅干しの精のウメケロ婆さんで、年をとっているだけあって、いろいろ知恵がありそうです。 「ねぇ、あなたたち、これが何の足跡だかわかる?」 シルバー王女が、封筒を差し出しました。ネギックはいち早くそれを受け取って、まじまじと見ました。 「簡単ですね。」 「えー?もうわかったの?」 「これは右足ですね。」 「は?」 「ほら、この4つの三角の左側に小さいかすれた様な跡があるでしょう。これは親指の跡ですよ。」 「そうじゃなくて、これは何の動物の足跡かって聞いてるのよ。」 「あー、なるほど。」 「本当にIQ400かあやしいものだゴマ。」 ゴマータは、憎まれ口を言いました。 「あたいは、これはキツネじゃないかと思うゴマ。黄色い封筒を使うところがいかにもキツネらしいゴマ」 ゴマータはえっへんと胸を張りました。 「うーん。どうかな。キツネならもっと指が長くて細いはずだ。これはある程度丸くて小さいから・・。」 「タヌキじゃないケロ?アライグマとかかもしれないケロ。」 「いや、タヌキやキツネやアライグマなら、もっと爪の跡がつくはずさ。これはどっちかというと、爪のあまりない動物といえる。」 意見を否定されて、おもしろくなかったゴマータは、ネギックから手紙を受け取ると、 「封筒だけを見て、あれこれ悩まないで、開けてみればいいゴマ。」 と、勢いよく手紙の封を切りました。 「あーーー。」 カメレオン総理は何か起こると思い、目を覆いましたが何も起こりませんでした。目を開けたとき、もうみんなは手紙の便箋を開けていました。 手紙にはワープロ文字でこう書かれていました。 |
−−−−−−−−−− はたしじょう −−−−−−−−−− シルバーおうじょと けっとうします。 けっとうすれば、 わかります。 −−−−− サヤ |
「何これ?私とけっとう??」 シルバー王女は怪訝な顔をしました。 「それにしてもひらがなばかりの手紙ですね。まるで暗号でも隠されているかのようだ・・。」 ネギックはメガネを指先で押し上げて、謎解きを楽しめるように、手紙をより近くで見ようとしました。 「わしにはそのままの意味しかないように感じるケロ。どっちかというとこれは大人の書いたものではないケロ。子供、それも小さな子供が書いたものに違いないケロ。」 ウメケロ婆さんは、文章の子供っぽさから感じることを言いました。 「これでキーワードはいくつか揃った訳ね。小動物を飼っている子供。しかも私より小さい子ね。でも・・『けっとう』って『決闘』よね、どうして私に決闘なんて申し込むのかしら。」 「王女の事だから、またいろんな悪い癖で敵を作ってるのかもな。」 アラエッサが意地悪げに、横目で王女を見ながらそういいました。王女はかちんときて 「なによぉ。私には悪い癖なんてないもの。それに私、恨まれるようなことなんて、したことないもーーん。」 「でも、人形の国で人形達が作ったせっかくのご飯を好き嫌いして食べなかったり、案外、迷惑こうむってる人がいそうなんだな・・。」 「ちょっと待ちたまえ。そんなことで口げんかしている場合ではないだろう。それより見たまえ。この便せん。すかし模様が入ってるぞ。」 ネギックが手紙のびんせんをお日様の光にさらすと、そこには何か模様が見えました。 「これは・・・。」 「ウサギ?!」 長い耳に丸い顔。かわいらしいウサギの絵柄が、便せんに織り込んであり、その下には何か紋章のような物がありました。その紋章には「P.P」という文字が見えました。 「P.Pってなんじゃケロ??」 「P.Pといえば、数年前に開国したあの郵便の国じゃないですか?ポスペとか言う・・。」 ネギックはカメレオン総理に同意を求めました。 「そうであーる。「P.P」で「ウサギ」と来れば、あのポスペウサギの国でアールな。あそこには確か・・シルバー王女より年下の王女がいたはずでアール。もしやこの手紙は・・。」 「その姫からって事?」 「明後日のパーティには確かポスペ国は全部出席するはずでアールから・・・・その時に決闘するという意味でアールかな・・。」 「全部?ポスペ国は色々あるの?」 「そうでアール。すんでいる民族によって別れているでアール。ウサギの他にも、クマ、ネコなどなどたくさん別れているでアール。」 「じゃあ、明後日になれば、この手紙の主に会えるのね。この超かわいいけど、武烈女王様のように立派に死神を倒した、クレヨン王国の王女、シルバーと決闘しようなんていい度胸じゃないのー。うけて立つわ。」 シルバー王女は、腰に手を当てて、ふんっとふんぞり返って、いばりました。 「また12の悪い癖の一つ。自慢癖なんだな・・。」 その場にいた全員が、王女の悪い癖は直ることはないのだろうかと、重いため息をつきました。 |