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結局、あれから俺を探したらしい。ゆきは、手に下げたビニール袋を抱えてしゃがみこみ、俺の寝床の横に陣取る。
「・・・・何の用だよ。」
「(ゆきの持ったビニール袋が気になるとろうしゃ。鼻をふんふん)・・・?」
「俺はお前なんか用ないし」
「(とろうしゃに気付いたゆき、ビニールをがさごそ、チーズを取り出して)?」
「小動物は嫌いなんだろ、お前の父親」
「 o(≧▽≦o)o(≧▽≦)o(o≧▽≦)o (チーズに声にならない喜び・笑)っっっ!!」
「何かいろいろあるみたいだけど、俺には、関係ないし」
「(*・・)o(包装をとって、とろうしゃに差しだす)はい。」
「・・・って聞ーてんのか人の話っっっ!!」
思わず叫ぶ( ̄▽ ̄;)。人の話はちゃんと聞け!
「ん?あにうしゃも食べましょーよ、これおいしーですよっ♪」
「そうやでー、ちゃんとアンタの分もあるから」
「いつの間に通じ合ってんだお前らっ!てか、誰が自分のチーズの心配してるんだっっ!」
「もー、あにうしゃ、食意地はってるんだから(笑)」
「でかいチーズ持ったまま、その台詞をお前が言うなぁっっ!」
ぜえぜえ・・・何か俺、すごいパワー使ってる気がしてきた( ̄▽ ̄;)。何でこんな一生懸命なんだ、俺( ̄▽ ̄;)?
「まあまあ」
ゆき、が、立ち上がる。「私やったら、もう行くから、もめんといて」
え?
「さっきのお礼、言いたかっただけやし。アンタ、私が泣かんようにしてくれてんやろ?」
思わぬ言葉に、つい。
「お、い」
思わず声をかけてしまう。
「ん?」
「大丈夫なのかよ・・・・その、いろいろ」
聞いてから、自分で呆れてしまう。俺がそんな事きいてどうするんだ。「えっと」
困っていると、二つ目のチーズを抱えたとろうしゃが口を挟んだ。
「んー何か分んないけど、あにうしゃも一緒に行けばいいんじゃ?」
「!」
とろうしゃの言葉に驚く。こいつがこんな気の利いた台詞を言えるなんて・・・。
「・・・ってお前、よーするにそのチーズ、一人占めか( ̄▽ ̄;)?」
「(〃⌒ー⌒〃)ゞ エヘヘ」
だから褒めてねえっ!・・・ったく、こいつは(苦笑)。俺がついて行こうとすると、ゆき、は。
「えーと、ありがと(とろうしゃをなでなで)」
「!」
・・・こいつら、何で通じ合ってんだ( ̄▽ ̄;)。ほんとに俺らの声が聞こえてるよーな気がしてきたぞ、この、ゆき。
「ヾ(@^▽^@)ノ行ってらっしゃ〜い」
チーズもらった上に撫でてもらって上機嫌なとろうしゃを背に、俺はゆきについて行く。またあの家に戻るのかと思うと、ちょっと嫌な気はしたが、しょうがない。チーズ、の、礼だ(俺は食ってねえけど)。話くらい聞いてやったっていい。
「・・・おい、そっちだったか?」
「・・・・・・」
何も言わずに駅前に向かうゆき。確かさっきは、こんな方向じゃなかっただろ。俺は、何だかイヤな予感がした。
「おい、まさか・・・っ」
がしっっ
鷲掴みにされたと思うと、いきなり、目の前が真っ暗になる・・・ゆきの、コートの中、らしい(ToT)。お前な、いきなりこれは、友達にする態度じゃないだろ。
「ごめん、ちょっと我慢してな」
最初に言えよ( ̄▽ ̄;)。どーやら、電車に乗って・・・。
「・・・どっか、家出すんのか」
ぼそっと呟く俺。気持ちは・・・正直言えばあまり分らない。親にハンコウ、とか。居ないもんは多分、美化してるし。
「私もや。おかーさんの事、きっと、びかしてる」
「・・・・」
こいつ、ほんとに、俺の考えてる事・・・・むぎゅ。
「ぷは、苦しいだろっ(怒)」
「暴れんといて。車掌さんに見つかったら、乗せてもらわれへん」
まだホームらしい。
「てか、お前、家出なんてしていいのか?」
「・・・びか、してるって思うけど。それでも、想像するしかないもん」
「もうリコンしてるんだろ?」
「それでも・・・会いたい」
電車の入ってくる音がした。
「・・・・」
怖いんだな、と思った。こいつの身体は暖かくて、こんなに優しいのに、一人で行くのが怖くて、一人が怖くて、こんな、うしゃぎにまで頼りたいくらい。
「・・・・あんたは」
「?」
ぼそっと、ゆきが、言う。
「親友やから、連れていくねん」
もう俺は驚かなかった。ゆきにはきっと、全部聞こえてる。聞こえてないなら、きっと、感じてるんだと思った。
「よっと」
電車の座席に座ったらしいゆきは、さっきより少し俺を楽な体制に抱き直してから聞いてきた。
「なあ、親友。あんた、名前、何?」
「・・・・何なんだろな。思い出せねー」
確かに呼ばれたはずの、俺の名前。確かにあったはずの、名前。どうしても思い出せない・・・名前。俺の、思い込みなだけか?本当は、名前なんて・・・?
「じゃあ、しばらくこれ使って」
「?」
コートの前をはだけ、俺を覗き込んだゆきの目が、少し緊張している。見上げていると、よし、と呟いて、こう言う。
「ゆきうしゃぎって・・・ど?」
「・・・・おう」
俺は、それしか答えられなかった。しばらく、呆気にとられて、ゆきの顔を見てしまう。
脳裏に、いきなり浮かんだ、記憶。
『真冬に降りて来てくれた私の真っ白な天使、ゆき。ゆきうしゃぎ、私の、天使・・・』
「え?気に入らん?」
「・・・え、あ?」
心配そうな顔で聞かれて、はっと我に返る。「いや、そうじゃなく、その・・・」
「ん?」
「電車内に動物、持ち込んじゃダメって言われてないかな?」
・・・・結局俺達は、二駅しか家出できなかった。それも学校に行ってなかったって事で、保護者が(つまりあの父親)引き取りにくるらしい。また俺、目の敵にされんのか(ーー;)。
「・・・・なあ、親友」
「?」
待ち合い室で、父親を待ちながら、ゆきが呟いた。
「家で、一緒に住めたらええのにな。私、アンタおったら、寂しいないわ」
「・・・・・」
「また、一緒に、かーさんのとこ、行く計画も立てれるし・・・」
「・・・・・」
ゆきは、分ってる。本当はそれが駄目な事も。それでも、怖いんだ。俺はそんなゆきの気持ちが、よく分った。俺だって、最初から一人が平気だったわけじゃない。
今だって、こんなに・・・暖かい。
「とーさんに、絶対飼うって、頼む」
「・・・・・」
俺が何も言えない間に、ゆきの父親が来た。案の定、すごい剣幕で怒っている。駅員に挨拶を済ませた途端、
「ゆきっ!お前はまた・・・!」
「せやって、おかーさんにっ」
「いい加減にしろって言っただろっ!」
「せやって・・・」
長い沈黙。俺は、父親の表情が、少し変わった気がしていた。ゆきの、小さな嗚咽が聞こえてきて、俯いたままゆきが泣いているのが分った。側にいるのに、何も出来ない。俺まで俯いてしまう。
「・・・・」
さらに長い沈黙の後、信じられないくらいにか細い父親の声がした。
「・・・どれだけ、心配したと思うんだ・・・」
「!」
俺は、思わぬ言葉に父親を見上げた。ゆきと同じように俯いたその姿は、まるで子供のように見えた。
「・・・・・お前に、何か、あったら・・・かーさんに、何て、言えば・・・」
「・・・おとーさん、ごめん・・・ごめんなさいっ」
声を上げて泣く、ゆき。それはどう見たって普通の小学生だった。大人の事情、に振り回される子供はツライ。けど、大人だって子供の事がどうでもいい訳じゃない、らしい。
泣いているゆきが、こっちに気付かない間に、俺は退散する事にした。ゆきの背中に、向かって一言残して。
「・・・もう、大丈夫だよな。がんばれ、ご主人」
帰り道、もう一度呟いた。「がんばれ、ご主人」
寝床に戻ると、とろうしゃがまだ食べてる(苦笑)。
「あれ?あにうしゃ?お帰りなさいっっ♪あの子は?」
「お前さ、ここ住んでいいわ」
俺の言葉に、きょとんとするとろうしゃ。
「ふえ?」
「俺が居て、また戻られても困るからな」
ゆきは、もう、前に進むんだ。俺のご主人は、戻っちゃいけない。
「あにうしゃ?」
訳が分らない(当然か)とろうしゃは、ひたすら俺の顔を見る。
「まー元気でな。その内、また顔出すし。」
「ええええ?そんなあ、寂しいですよぉ[壁]ノ_・。) 」
「なーに言ってんだ、この界隈のどっかにゃ居るよ(苦笑)」
「あにうしゃぁ〜〜」
「あ」
俺は気付いて訂正する。
「それとな、とろうしゃ」
「はい?」
「俺、名前思い出した。ゆきうしゃぎって呼べ」
「ゆきうしゃぎ?へー、何か綺麗ですね」
「だろ?」
『真冬に降りて来てくれた私の真っ白な天使、ゆき。ゆきうしゃぎ、私の、天使・・・』
顔も思い出せない、俺の母親。今はその声が、ゆきと重なる。
「・・・さんきう、やで」
「はい?」
「いや?俺も、関西弁ってゆうの、つこーて、みよおかなって・・・おもてん?」
「それ・・・あの子より変ですよ( ̄▽ ̄;)」
「ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ」
な、何ごとも練習だ、練習( ̄▽ ̄;)。その内、普通に使えるようになる・・・やろ(苦笑)。
ほんの少しの間だったけど、俺の大事なご主人。
ちゃんと見守ってるから、俺の事・・・忘れんなよ・・・やで( ̄▽ ̄;)。
さぁて、何処に行こうか・・・ねん(?)あーっ関西弁って難しいっっっ!!
見上げた空にも負けないくらい、俺の気持ちも綺麗な気がした。
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