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2.行方不明のキーワード


「皆の情報を報告してほしいでアール。」
 2日後、クレヨン城で再び皆が集いました。
 向かい合わせに置かれた細長いテーブルには、シルバー王女、カメレオン総理、アラエッサ、ストンストン、そして反対側にノビルジャー、ネギック、ニンジンッピ、トウフモン爺さん、ソソソナス、トモロコフスキーが座っていました。
「まずは、トマトマトについての情報から。」
 そうするとニンジッピが手を挙げました。
「トマトマトは1週間ほど前に商店街の福引きで温泉旅行が当たって、ヒノス十二湯へ行ったまま、帰ってきてないそうっぴ。」
「おや、ウメケロばぁさんも1週間ほど前に宝くじが当たってのう、大喜びしていて、しばらくして行方がわからなくなったそうじゃ・・。トマトマトと一緒に旅行に行っているのかのう・・。」
 トウフモン爺さんはそう言って不思議そうにその四角い頭を傾げました。
「ホーレソレも1週間くらい前にいなくなったらしいわ。皆同じ頃にいなくなっていると言うこと?」
「ゴマータは、実は色が黒いことを気に病んでいたらしいんジャー。そして同じく1週間くらい前、急に一皮むけたように白ゴマになって、喜んでいたらしい。それで皆に見せびらかしまわっていたらしんジャーが、やっぱり行方がわからなくなったそうジャー。」
「レンコポッチはなにやら周りの人にちやほやされていたらしいナス。近所の人の話によると、なんでも1週間ほど前から、レンコポッチを見ると訳もなく親切にしたくなるとか言ってたナス・・。学校へも近所の人がレンコポッチに無駄に歩かせないようにと御駕籠を作ってそれに乗せて送り迎いしたそうだナス・・。でもそれから行方不明らしいナス。」
「キャーベッタも1週間前からいなくなっているらしいんだ。彼女は1週間前に『あなたもアイドル・キラキラスターコンテスト』で見事優勝してトップアイドルになる道を獲得したわけだけど・・腑に落ちないのはどうしてキャーベッタが優勝したかと言うことなんだ。他の行方不明の皆もどうやら何かラッキーなことが起こっていなくなってるようだけど・・・。」
 トモロコフスキーがそういうと、シルバー王女が
「どうしてキャーベッタが優勝するのが腑に落ちないの?」
「どうしてって。他にもキュートでビューティフルなお嬢さんがいっぱいいたからさ。それにアイドルならこの僕だって選ばれてもおかしくないだろ。」
「はぁ・。・・・トモロコフスキーは、自分が選ばれなかったからひがんでるんだな・・・。」
 ストンストンはあきれてため息をつきました。
「要するにIQ300の僕が推理するところによると、彼女たちはいったんは自分の夢が叶って、そしてその後行方不明になってることになるね。だってそうだろ、主婦のトマトマトは主婦の仕事から解放される温泉旅行に、金にうるさいウメケロばぁさんは宝くじに当たって大金を手に入れる。そしてゴマータは不自然に白ゴマになり、レンコポッチは仮病を使わなくても皆が自分に世話を焼いてくれる。キャーベッタは念願の歌手アイドルデビューが決まる・・うまく皆が皆同じ時期に願いが叶いすぎだ・・。と言うことはホーレソレは公爵令嬢になるのが夢だったのかな?」
 カメレオン総理はネギックの意見を、深くうなずきながら聞き、
「ホーレソレがいなくなった時期と他の野菜の精がいなくなった時期は微妙だが異なっているのでアール。ホーレソレが若干早いようでアール。」
と言いました。
「そうね。私、ずっと疑問に思っていたのだけど・・どうしてほうれん草公爵は、跡取りにわざわざ女の子を選んだのかしら。どうも不自然だわ。しかもただの女子高校生のホーレソレをよ!ホーレソレを跡取りにしたら、何でもかんでも『どうでもいいけどー』ですまされちゃって政治どころじゃないでしょ?跡取りに抜擢と言うには不的確すぎるわ。」
「跡取りが投げやりじゃ不的確とか、シルバー王女に言われたら元も子もないような気もするけどなぁ・・。」
「そうなんだな。王女はホーレソレよりも12の悪い癖を持っているんだしにょー。」
「・・アラエッサ・・ストンストン・・なんか言った?」
 シルバー王女は聞き捨てならないとばかりに、ギロッとアラエッサとストンストンをにらみました。
「とにかく、ホーレソレがキーと僕は見たね。ホーレソレの実家で話を聞いた方がいい。公爵令嬢に選ばれる前に変なことはなかったか・・。」
 ネギックの意見に皆うなずきました。
「シルバー号の用意を!」
 カメレオン総理は、早速以前シルバー王女の旅のために作ったシルバー号を手配しました。シルバー号はピンク色の汽車でその名のせいかシルバー王女に似て少しわがままでしたが、今は一般にも開放され、いろんな国の間をつないでいました。
 緊急列車を仕立てたカメレオン総理は、
「わしは城で待機するでアールからして、皆の者頼んだでアール。アラエッサ、ストンストン、シルバー王女にもしものことがないように、しっかりお守りするでアール。」
「了解したんだな。」
 そうしてほうれん草自治区にシルバー号を走らせました。

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