2.AKT(02.08.23) 心のかけら
〜Schwanensee:Scece finale〜
《訳:白鳥の湖:情景・終曲》
「運命を受け入れる者に幸いあれ・・運命に逆らう者に栄光あれ・・。」
(エデル)
 気がつくと、そこは森の中。湿った空気が近くに池があることを知らせていました。目が覚めたあひるは、いつもと視線の高さが違うことに気づきます。
 まさかまさか・・。あのいつも見る夢のように鳥のアヒルの姿になってしまったの?あわてて、池へと走ります。池に映った姿はまさにあひる。黄色い小さなアヒルです。あひるはがっかりしました。でももしかしたらこれは夢かもしれません。いつも見ているあの夢かも・・。
 そう思っていると森いっぱいに不気味な声が響きました。あのあやしい人物、ドロッセルマイヤーです。ドロッセルマイヤーは言います。
「これは夢ではない。しかし、お前が覚悟を決めるなら、もう一度女の子にしてあげてもいいよ。」
と・・。このアヒルの姿が夢でなく本当ならば、あひるにとってはこんなにラッキーなことはありません。ふたつ返事で受け入れます。
「本当に覚悟があるなら・・。」
とドロッセルマイヤーが繰り返します。あひるはみゅうとの傍にいられてみゅうとにいつか笑顔を取り戻してあげられるなら・・女の子になりたい・・。恋する女の子にとってそれは普通の願いです。しかし、これは契約。本当は契約なのです。女の子に戻るための赤いルビーの首飾り・・それはあひるの運命をドロッセルマイヤーが楽しむための契約・・。しかし、そんなことは夢にも思わず、あひるは赤いルビーの首飾りを受け取りました。
 アヒルめいたことを言ったりしたりすれば、簡単に解けてしまう魔法・・。それはいつもあひるがアヒルであることを常に意識し、ドロッセルマイヤーと契約していることを忘れさせないための作戦でしょうか。


 アヒルから人間の姿に戻ったはいいけれど、もちろん服がありません。裸で池の水に浸かっていると、そこへオルゴールの音楽を手で鳴らす女の人が現れました。からくり時計のような不思議な女の人・・。彼女の名はエデルといいました。アヒルに服を渡すと、不可思議な言葉を羅列して、あひるの思考を混乱させます。でも悪い人ではなさそうです。

 エデルと別れて、あひるが学園に戻ると、庭では憧れのみゅうとが座って読書をしています。なんとか話しかけたいあひるです。この前の足の怪我のことを謝るという口実を見つけ、みゅうとに話しかけました。しかし、みゅうとはなんだか寂しそうな表情で無気力な返事を繰り返すばかり・・。そこへアリクイの「アリクイ美」が来ました。
 アリクイ美は、舌をちろちろしながら、みゅうとに唐突に告白をしました。みゅうとは曖昧に「別に・・」と言うばかりで、アリクイ美の強引な押しに、つきあいを承諾する格好になります。驚くあひるですが、みゅうとはそんなことはどうでもいいようにアリクイ美のしたいようにさせています。
 その場にいるのが気まずくなってあひるが席を外そうとすると、向こうからみゅうとの恋人であるるうが来るのが見えるではありませんか。あひるは必死にるうの気をそらせようとしましたが、るうは構わずみゅうととアリクイ美がいる方へ向かいます。
 立ちはだかるアイクイ美。その腕にはみゅうとが抱かれています。るうにこれ見よがしに見せつけるアリクイ美ですが、るうはちっとも気にしていないようです。

 その日のバレエの授業ではクラスの再編成のための試験的な踊りを披露することになりました。挑戦的なアリクイ美は自分が今度は特別クラスにはいるのだと豪語して、るうに挑戦状をたたきつけます。
 アリクイ美はカップルになったばかりのみゅうとを指名し、華麗に踊りました。その踊りはダイナミックで見事ではありましたが、何かが足りません。そう。アリクイ美もみゅうとも楽しそうじゃないのです。対抗意識丸出しのアリクイ美と無感情なみゅうと。二人の演技は上手でも「それだけ」にとどまるものでした。
 次にるうが踊ることになり、るうはパートナーにあひるを選びます。あひるは突然指名されてがちがちに緊張しています。とてもじゃないけど、一緒に踊ってうまく踊れる自信も実力もありません。
 辞退したいあひるに、るうは優しく微笑みます。
「私の言うとおりにしていればいいから。」
 るうと同じように踊り出すあひる。でもやっぱりへたくそです。しかし、るうの巧みなリードによってあひるは自分でも信じられないほどドラマチックな踊りができてきます。へたっぴなあひるですが、踊りを踊る楽しさは知っています。踊りの素晴らしさ、愉しさをアピールしたるうとあひるの踊りは、みんなからたくさんの拍手をもらいました。これで勝敗は明らかです。

 放課後、アイクイ美はみゅうとを呼び出して、罵倒しました。
「恥をかかされた。あなたがるうの彼氏じゃなかったら私はおつきあいなど申し込まなかった。」
と・・。みゅうとは平手で殴られても黙っています。
 悔しさでいっぱいのアリクイ美は森の中で八つ当たりをして気を紛らわそうとしましたが、涙があふれて泣き崩れました。そして、泣いているアリクイ美に赤い光をまとった王子様がなぐさめに来たのです。
 あひるはそれを目撃しました。その赤い光の王子様はみゅうとでした。いや、みゅうと自身ではありません。
「ボクにはキミが必要なんだ。キミのその傷ついた心が・・。」
 その時、あひるの胸のルビーのネックレスが反応してきらめきました。ドロッセルマイヤーからもらったあの赤いルビー・・。
 あひるは瞬時にわかりました。
「あれは・・みゅうと先輩の心のかけら!?」

 赤いルビーは激しく発光し、あひるを「プリンセスチュチュ」に変身させました。
 アリクイ美はプリンセスチュチュの呼びかけに、強がりで答え、激しい踊りを見せました。それは力でねじ伏せるような強烈なターンです。あひるはアリクイ美の言っていることに違和感を感じます。
「あれは、アリクイ美ちゃんの本当の気持ちじゃない!」
 アリクイ美は以前、るうに憧れるあまり、るうに話しかけたことがあり、その時るうに言われたのでした。
「あなたは私のようには踊れない。」
と・・。その言葉がアリクイ美に悔しさを植え付けました。るうを見返してやると思ったのです。そのために自分を見失い、手段を選ばず、強引に傲慢に事を進めようとしていたのです。しかし、そのるうの言葉は本当は違う者だったのではないでしょうか。
「あなたはあなた、私は私なのだから、あなたが私と同じようには踊れない」と・・あなたにしかできない踊りがあるはずだと・・。
 プリンセスチュチュは本当のアリクイ美の心を取り戻すよう躍ります。アリクイ美自身の気持ちを自由にバレエで表現することをアリクイ美の心に見つけてあげたのです。

 アリクイ美が本当の自分を取り戻した時、アリクイ美から赤い光の王子が抜け出ました。王子はプリンセスのチュチュの導きによって小さなかけらに戻り、そして、みゅうとの胸に吸い込まれていきます。
 その「くやしい」という気持ちを取り戻したみゅうとに、微妙な変化が訪れました。その変化をふぁきあが見逃すはずがないのでした。

 さてさて、次は一体どんな気持ちを救うのでしょうか。みゅうとの変化に気づいたふぁきあは何を思うのでしょうか。
ゆっくりとお話の水面を泳いでいきましょう。
とり戻した心のかけら■「くやしさ」
《織夜的チュチュ感想》
 最初見た時はアリクイ美ちゃんの顔がおかしくて、気を取られていたのですが、2回、3回と見るうちにアリクイ美ちゃんの悔しい気持ちや悲しい気持ちが痛いほど伝わってきました。
 「くやしい」と言う気持ちを一番に取り戻したみゅうと・・。これからどんな変化が見られるのか楽しみです。

 エデルさんの言っている台詞はかなり意味深でしたね。あひるちゃんは運命を受け入れる者?それとも運命に逆らう者?これからの展開が気になります。
 個人的には、あひるちゃんの「鳥くせー」とか「鳥は大好物!」のあたりのテンポがお気に入り。かわいいー!あと、るうちゃんに「違う違う」って言ってる時の足が好きです。(なんかマニアックだな・・。)

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めにゅー