しま★ちゃんねる劇場


過去の演目

■こわ〜い夢

 最近、殺人事件や行方不明や、テロや戦争や、恐ろしいニュースばかりでげんなりしていたせいか、今朝はとってもこわ〜い夢を見てしまった。
 実のところ、目覚めた時にはどんな風にしてこの夢が始まったのか覚えていなかったのだが、目の前の人の太ももに細長〜い刃物が何本も突き刺さったり(ぎょえ〜っ)、近くにいる人たちがうめきながら、どんどん死んでしまったりして(うぬぅ〜ぅ)、心休まる時がない。
 やっとのことで、薄暗い部屋の中に、三人ばかりが隠れるようにして落ち着いたとき、すでにそこには死体が一つ。
 今まで一緒に逃げてきた男性が、どうやら今、息をひきとってしまったようだ。今、この部屋で生きているのは、私ともう一人の、二人だけ。私以外の一人は男性で、どうやら亡くなった男性と知り合いだったようだ。
 これからどうしたらいいのだろう……。
 途方に暮れてしばらくぼーっと部屋の入口を見つめてしまった。
 部屋は学校の教室の一つだった。生徒の机が乱雑に並べられている。
 ふと振り向くと、部屋にいたその男性が亡くなった人の亡骸に手を差し伸べようとしている。机の間に倒れたままのくずおれた体を直して、きちんと横にしてあげようというのだろう。
 なんとはなく見つめていると、彼は突然、「うぁっ…」とうめいてしりもちをついてしまった。
 よく見ると、死体がもぞもぞと動いている。お、起きだしているではないか!!(ぎょえ〜〜〜!!)
 今まで一緒に走って逃げてきた、普通の、きれいな肌だったはずのその死体の主は、いつのまにか皮膚や衣類がどろどろに溶けだしていて、何かのかたまりがトロリとほおを伝い落ちていく。
 彼は、二、三歩ほどしりもちをついたままじりじりと後ずさりしたかと思うと、突如ものすごい早さで立ち上がって、部屋の入口に向って駆け出した!
 まずい! 私の方が「ヤツ」に近くなってしまったじゃないか!!
 あわてて私も180度方向転換、一目散に部屋を飛び出した!
 途中机にガン、と足をぶつけたが、そんなことを気にしてはいられない。「ヤツ」はぐんぐん迫ってくる。
 廊下に飛び出すとそこは突き当たりで、右手には階段がある。しかし、降りても追い付かれそうだ。
 とっさに顔を前に向けると、目の前の突き当たりに桐の衣装箪笥がある。上段が両開きの戸棚になっているっ!
 「ヤツ」が部屋から出てくる前に身を隠さなければ、と何十分の1秒かに判断して、その戸棚の取っ手を掴み、むんずと引き開けて中に入り込んだ。心臓がバッコバッコ大音響を上げている。とにかく、大慌てで内側から扉を閉める。そこは闇。
 ……間に合っただろうか。「ヤツ」は気づいてないだろうか。
 扉が閉まるところを一瞬でも見られていたら、間違いなく、「ヤツ」はここにやってくる!!

 その最高潮の緊張感の中、私は目覚めたのだった。
 興奮が収まらないのでそのまま布団にもぐっていると、5時30分に炊けるようにセットした炊飯器が「ピーッ、ピーッ」と炊けた合図を鳴らすのが聞こえた。

 朝、夫に、
「今日、もンのすごいこわい夢を見た。ゾンビがでてきたよ、ゾンビ」
 と言うと、夫が、
「んー。僕は、いやな夢を見た」
 と言う。
 どんな夢かと聞いてみると、
「携帯の留守番電話にメッセージが入っていて、聞くとお客さんからで、トラブルですぐに来て欲しいっていうの。いやだ〜。行きたくないよ〜。って思ってる夢」
 だそうだ。
「いいな〜、こわい夢で。僕、こわい夢のほうがいい。ゾンビのほうがいいよぉ」

 ゾンビは携帯の留守電に負けたのだった。

2004年3月30日


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